漣のゆくえ とむらい屋颯太


 事故でも自殺でも、人が死ぬと魂はいなくなり、直ちに腐り始める。
しかし生きている人にとっては、その抜け殻は大事な人の姿であり、すぐには受け入れられない。
そんな人々にとって、弔いはとても大事なものとなる。
「弔い屋」の主人・楓太は、そんな遺族の気持ちを救いとる。
 今回も、訳ありの死人を運んでほしいと依頼が入る。

 楓太自身も辛い過去を持ち、生き残った者として、残された人たちの気持ちに区切りをつけられるよう、細かい心配りをする。
新しい仲間も増えてにぎやかになるが、やや感傷が押しつけがましいと感じる部分もあった。
それでも暗い雰囲気にはならず、生きている人を一番に考える様子は力強い。

猫君


 江戸・吉原で髪結いをするお香に育てられていた猫・みかんは、やがて20年がたつという頃、病を得たお香に一つの約束を言い出される。
それは、近く自分は死ぬから、飼い主を取り殺したと言われて捕まえられる前に、逃げなさいという。
悲しみに暮れる暇もなく逃げ出したみかんを待っていたのは、猫又としての生き方を学ぶ猫宿と、先輩猫又たち。
しかし今年の新米猫又たちは、いつもと違う学びとなってしまった。

 登場人物が猫であることを忘れぬよう、話すセリフに時々「にゃあ」が加わることに慣れてしまえば、これまでの作品と同じように楽しめる。
つまり、何か問題が起き、仲間と共に、知恵を絞って切り抜ける。
いろんな個性が楽しい知恵を生み、それが猫たちだと思うと、集まっている様子を想像するのもまた楽しい。