未来を、11秒だけ


 繁華街でトラブルに巻き込まれた早紀は、シェアハウスのオーナーに助けられ、シェアハウス“FREEDOM TREE
”の住人達と知り合う。
彼らは皆、本名や身元を隠して生活していた。
そしてそのうちの一人であるキャロが突然、姿を消す。
早紀は、特殊な力を持つ知り合いの司と共に、行方不明のキャロを探し始める。

 特殊な力を持った人が、たくさんいる。
そんな世界なのに、その力は意外と知れ渡っていないし、大きな悪さに使われたりもしていない。
おかしな設定が違和感を大きくする。
そして、どこかで読んだような出来事ばかり。

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未来を、11秒だけ [ 青柳碧人 ]
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せき越えぬ


 上司からの指示で向かった箱根の関所で、ある不正をただしたことから縁を得て、小田原藩士・武一は東海道・箱根の関守になった。
厳しい調べがある関所には、毎日のように切実に関を超えたい者たちがやってくる。
武一は、幼馴染の騎市と共に、新しい仲間を得て、関守の仕事に精を出していた。

 人の縁の妙。
いい出会いがあるときは続く。その縁がもたらすものがたとえ悲しい出来事であっても、それは後悔にはならないと強く言われているような物語。
最後まで力強い。
足軽の衛吉が雰囲気を軽く明るくしてくれていて、一番印象に残る人物だった。

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怪談飯屋古狸


 奉公先を自ら「追い出されてきた」虎太。
偶然見かけた看板娘・お悌に惹かれて入った飯屋「古狸」で、虎太は不思議な取引をする。
それは、怪談話をすれば一食タダ。
お悌と飯に釣られ、虎太は幽霊が出るという家に潜り込む羽目になる。

 これまでのシリーズと同じようなテイスト。
ボケ方もそっくりなので、新しくする意味があるのかわからない。
今までの、動物や子供といったかわいらしく雰囲気を和らげるものが減った分、面白みも減った感じ。

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菊花の仇討ち


 北町奉行所の同心・中根興三郎は、姓名掛というお役目のため、ほかの同心と違い暇をたくさん持っている。
そんな興三郎の生きがいは、変化朝顔の栽培。
ある日、古手屋の表につられている小袖に目を奪われる。
見事な変化朝顔が描いてあった。

 普段は無口なのに、好きなことなら途端に周りがうんざりするほど口が回る。
そんな興三郎が、朝顔にかかわる悲劇や、ときに悪事に出くわす。
大きな地震の後の設定のせいか、悲しい話が多かった。
朝顔の話はとても興味深いが、そのせいか主人公の人柄の印象が薄くなった。

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ばけもの好む中将 八 恋する舞台


 帝に舞を披露したことで注目され、突然「モテ期」が到来した宗孝。
返事をしようにも、苦手な和歌に四苦八苦していると、中将宣能から「妹にみてもらえばいい」と言われる。さらに、九の姉が振り付けた桜の舞で大成功を収めた専女衆は、次の舞の準備を始めていた。

 このところ、専女衆の話が多くて飽き気味。同じような話となってしまっている。純粋に中将が不思議を探すことがメインではなくなってしまった。ただ、登場人物は相変わらず個性的で、初草の様子もほのぼのとしてかわいい。

失業パラダイス


 TV番組制作会社のADだった敦は、番組のやらせ問題に巻き込まれ、首になってしまう。
一緒に失職した先輩ディレクター・岡本が立ち上げた一般向けの撮影会社に付き合うことになり、そこでペットの撮影などをしていた。
ある日、極度の対人恐怖所の少女から、歌う様子を取ってほしいと依頼が入る。

 人の言いなりになり、強引な友人に巻き込まれ、押し切られ、迷惑を言い出せない、優柔不断な男が主人公。
相手の為人が分かっているからのいいなりだとしても、私は振り回されるのがキライ。そのせいで最初から嫌悪感でいっぱい。
コミカルかもしれないが、印象に残るほどでもなく、説明にあるような「長編」というほど長くもない。

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失業パラダイス [ 碧野圭 ]
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横濱エトランゼ


 高校3年生の千紗は、幼馴染で初恋の相手、善正のいる横浜のタウン情報誌の編集部でバイトを始めた。
そこでの雑用の仕事とともに、小さなイラストの仕事も請け負う。
横浜の街を知るいい機会にもなり、また出会う人達も印象的な人ばかりだった。

 書店員のシリーズとほぼ同じ印象。
日常で出会うちょっとした不思議を追い、ほんわかとした真実に巡り合う。
横浜の地の歴史は興味深いが、ストーリとしては少しも印象に残らない。

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横濱エトランゼ [ 大崎 梢 ]
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グッドバイ


 長崎の油商・大浦屋の主の大浦慶。
黒船来航で日本中が大騒ぎの中、茶葉交易に乗り出した。
無謀と言われたその商いを軌道に乗せ、大浦屋も繁盛するが、やがて外交問題にもなりかねない詐欺にかかり、今でいう3億円ほどの借金を負う。
それでも逃げ出さず、今を辛抱のし時だと踏ん張るお慶。
そのお慶が商いで出会い、友情をはぐくみ、信をおき、ともに目指したものを描く。

 実在したお慶の、大きな浮き沈み。商人とはこれほどまでの大事をやってのけるのかと慄く。
方言や商売のことが難しくてなかなか進まなかったが、歴史上有名な人達の話よりはよっぽど興味を引いた。

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グッドバイ [ 朝井まかて ]
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グランドシャトー


昭和38年、母の再婚相手である義父の、次の結婚相手にされそうになり、ルーは大阪に逃げてくる。
あてにしていた母の親戚も見つからず、途方に暮れていたルーは、大阪京橋のキャバレー「グランドシャトー」のナンバーワンホステスの真珠に拾われる。
下町の長屋での真珠との暮らしにこの上ない幸せを感じながら、ルーは「グランドシャトー」でも人気を得ていく。

 ひたすら家族を思い続けて働いたルーが、家族からの拒絶によって打ちひしがれる様子が辛い。
心のよりどころとなった真珠の存在だけが、ルーのその後の生き方を決める。
18歳から50近くまでの、ルーの物語。

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グランドシャトー [ 高殿 円 ]
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迷子の王様 君たちに明日はない5


 リストラ請負会社で面接官としてやってきた真介。
ベテランで優秀な美容部員、家電メーカーの研究員や異常なほど無口な書店員と、今回も様々な人間の首を切る。
そして最後は自分自身の身の振り方まで考えなければいけなくなった。

 どんなにいい会社に入っても、一生安泰とはいえない昨今。
リストラの対象になるのは無能ばかりではないし、優秀な人ならその決断にも興味を持つ。
真介が、仕事で出会う人との会話の中でつかんでいくものが何なのか、その結果が今回は出た。
仕事選びだけでなく、選び方まで考えさせられる。

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迷子の王様 君たちに明日はない5 (新潮文庫) [ 垣根 涼介 ]
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