早朝始発の殺風景


 始発の電車で出会ったクラスメイト。特に親しいわけではない。
女子高生3人が、ファミレスでかわすいつもの意味のないおしゃべり中、意見が対立する。
遊園地の観覧車でなぜか男二人になってしまった。

 そんな、ちょっと気まずい密室での出来事。
『体育館の殺人』、『水族館の殺人』、『図書館の殺人』などの作者。
普通の日々の中で、ちょっと観察するとわかるけど、なんとなくどうでもよくて見過ごしている謎を拾い上げる。
短編集として、結末は「まだもう少し気になる」程度で終わらせてあるため、どれももうちょっと読みたいと思わせる。

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早朝始発の殺風景 [ 青崎 有吾 ]
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稽古長屋 音わざ吹き寄せ


 足を悪くして芝居をやめざるを得なかった兄と、唄と常磐津の稽古屋をしている兄妹。
やってくるお弟子さんに稽古をつけながら、二人は穏やかに暮らしていた。

 ご近所さんや芝居仲間、手伝いに来てくれるようになったお光のことなど、日常の細々を丁寧に語る。
兄の足が悪くなった経緯が忌事のように隠されているが、それほど嫌味でもなく、やがて知れる事として大事にされているようで心温かい。
どんな傷もやがて気持ちの区切りがつく時が来るといわれているよう。

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稽古長屋 音わざ吹き寄せ [ 奥山 景布子 ]
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鶏小説集


 鶏肉をめぐるいろんな小話。
似てるけど、好きなトリの部位が違う少年たち。妙に気が合って、年に一度だけ家に遊びに来ていたのに、ある時急に合わなくなった。
そしてその親たちのぼやき。
よく通っていたコンビニの事情、など。

 「肉小説集」とは違い、なんだか不幸だったり不憫だったりする読後感ばかりで気が滅入る。
移り変わる主人公同士のつながりもさして興味をひかず、ただの一人語りで終わる。
トリ料理も魅力的に書かれていないので、最後まで気が乗らないままだった。

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賞金稼ぎスリーサム!


 母の介護のため刑事をやめた藪下。その彼に、ペットショップ放火事件の調査依頼が舞い込む。
その事件には、報奨金が掛けられていた。そして藪下を指名したのは「警察マニア」の淳太郎という男。
さらに火事現場を不自然に観察する少女と出会ったことで、3人は報奨金のために手を組むことになった。

 3人とも個性豊かだが、「法医昆虫学捜査官」に比べ薄い。
しかし、謎の少女として登場した一花の特技は異彩を放っていた。当初は藪下のいう「表情の乏しい人間は、無意識に敵意を抱かれるし警戒される。」という描写のままの、扱いずらい人間のようで嫌悪感が沸くが、ただ気持ちの表現が下手なのだとわかってきた頃に面白くなってくる。
そして狩猟や罠猟の話は興味深い。
このチームはこれからも続きそうだ。

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アランマフラーと帽子


使用糸 ハマナカフーガ 10玉
 「アラン&ガンジーニット」から
  アランマフラー 284g
  その模様を使って帽子 81g

 「大切に使いたい 手編みの小物」から
  とんがり帽子 72g


写楽とお喜瀬


 江戸で、わずか10か月ほどで姿を消した謎の絵師・写楽。
彼には表だって名乗れないわけがあった。
能役者が本業の十郎兵衛は、非番の時にだけ書くと決め、自身のうちに潜む黒々とした後悔と自責の念を紙にぶつけるように描いていた。
それはこれまで見たこともないような描写で、見るものに衝撃を与える絵だった。

 謎の絵師はどう生まれたのか。なぜ1年もたたずに姿を消したのか。
その強い印象を残す絵はどんな心持で描かれたのか。
その心の内は、強烈に描かれているが、その一端となるお喜瀬が妙に気持ちの悪い書かれ方をしている。
性別ではなく、人となりが。
写楽となった十郎兵衛を描くなら、許嫁となった香都のほうを絡ませたほうが読みたかった。
その違和感が、お喜瀬の気持ち悪さとしてずっと残る。

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写楽とお喜瀬 [ 吉川 永青 ]
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花舞う里


 母の故郷である愛知県の澄川にやってきた潤は、そこで都会とは違う風習に戸惑う。
中でも一番は、花祭りという伝統神楽。
授業でも習うほど、地域の文化として当たり前にあるその祭りが、潤には苦しかった。
 
 『マカン・マラン』の作者だが、郷土史や文化に興味がわかず、いまいち入り込めない。
田舎ならではの風習や人間関係も、特別なことはなにもなく、普通の毎日が描かれている。
それぞれの心の中を丁寧に描いていたマカン・マランとは違い、潤から見た視点でのみの人物像なので、親近感がわかず、祭りの高揚感さえどこか遠く感じてしまう。

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花舞う里 [ 古内 一絵 ]
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亥子ころころ


 武家出身の菓子職人・治兵衛が、出戻り娘のお永、孫娘のお君と三人で営む「南星屋」。
地方を旅して集めた菓子の覚書を頼りに拵える菓子店は、小さいが繁盛していた。
ある時治兵衛が手を痛め、粉を捏ねるのもままならぬようになった時、まるで呼ばれたようにやってきた行き倒れの男は、菓子職人だったことから、「南星屋」で働くことになった。

 前作は治兵衛の出自が大きな問題となってしまい、やっと皆の心が落ち着いてきた頃に出会った運平。
人の縁を描くのが上手い作者らしい、厳しくも温かい出来事が続く。
今回も出てくる菓子を想像してしばらく手が止まってしまうくらい、魅力的なものばかり。
そして、地元の「塩味饅頭」が出てきので一層うれしくなる。
今後の人間関係にも興味があるが、次はどこの菓子が出てくるかと楽しみになる。

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亥子ころころ [ 西條 奈加 ]
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