ふわふわのセーター




使用糸:リッチモア ポメラニアン(1)、リッチモア トッピングモール(160)
編み図:オリジナル
使用針:12号針、10号針 250 g

誰が疑問符を付けたか?


 誰もが振り返るほどの美人でありながら、「鉄の女」「氷の女」「カミソリ女」という強面なあだ名で呼ばれるほどの冷徹な仕事ぶり。
愛知県警の警部補・京堂景子は、一瞬で相手を凍らせるほどの眼差しと声で事件現場を引き締める。
しかし家に帰るとラブラブな夫の新太郎の作る美味しいごはんに笑顔があふれ、そのギャップは誰も知らない。
今日も手料理を食べながら、新太郎が事件を解くカギを見つけている。

 表と裏の顔を持つ景子警部補の、頭脳は実は新太郎で、ちょっと話を聞いただけでヒントをつかんでしまう新太郎。
その変わり身のギャップが面白いが、事件は本当にあっという間に解決してしまうのでちょっと物足りなく感じる。
でも無理やり感はないので納得できる推理。

春告げ坂―小石川診療記―


 長い坂を登り切った先に位置する小石川養生所。貧しいものが集まるこの診療所で、医師の高橋淳之祐は毎日忙しくしていた。
手習い所で文字を教えていた女性や、金が返せず奉公先の店からくすねていた男、いろんなものを背負った者たちが日々やってきては、治療を受けている。
そんな中、大家に連れられやってきた男は、肝臓を患っていて、動くのも辛そうだった。
そしてその男は、淳之祐の過去とも因縁のある相手だった。

 療養所内での問題も多い中、身寄りのないものを引き受け、治療する。
医者の淳之祐が日々力不足を悔やむ様子が良く描かれている。
そんな中で患者としてやってきた男が自分の家族とかかわりがあるなんて思いもよらなかった淳之祐が、戸惑いながらも医者として成長しようと決心するまでになり、また希望が湧いてくる結末ですっきりと読み終えることができた。
さらに、ふと聞こえる笑い声や、毎年ちゃんと咲いてくれる桜など、ちょっとしたことで気持ちが和らぐ様子がところどころあって、気持ちが暗くならずに済んだ。

無明 警視庁強行犯係・樋口顕


 荒川の河川敷で見つかった高校生の水死体。
所轄は自殺と決定した事件だが、記者の遠藤から聞かされた疑問がひっかかった樋口は、再捜査を進言する。
いったん自殺で決着した事件を掘り返すのは、所轄のメンツをつぶし、他所の縄張りを荒らすことになる。
それでも樋口は、犯人を見逃してしまうことの方が重大だと、別動隊として探り始めた。

 きっかけが小さなことでも、気になったことは解決させる。
なぜか評価が高い樋口のやり方でいつも事件は解決し、周りは改心するが、安積班のようなチームでの活躍でもなく、今回は部下もほぼ登場しないため、どことなく独りよがりな感じがしてくる。
樋口の人徳の所以がいまいち納得できないため、共感もしにくかった。

メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち


 ローカス賞受賞作。
ヴィクトリア朝のロンドン。父に続いて母を亡くした令嬢メアリ・ジキルは、母が「ハイド」という名前の人物に毎月送金をしていたことを知る。
自分が知らない事実と「ハイド」という名前に戸惑い、メアリは名探偵シャーロック・ホームズを訪ねて真実を知りたいと頼んだ。
探り始めるとともにどんどん増える謎と、メアリの元へ集まってくる“モンスター娘”たち。
果たしてこの謎は解けるのか。

 様々な物語で登場するモンスターの娘たちが集まって、個性豊かに動き出す。
主人公のメアリが一番地味に思えてしまうくらいのメンバーで、しかも作中でそれぞれが茶々を入れるという面白い構成になっている。
ただ、そのせいでちょっと間延びするような、話の腰を折られるように感じる部分もあり、一気に集中して読める感じではない。
そして、ホームズが完全に脇役となっているのも面白かった。

若葉荘の暮らし


 感染症のあおりを受け、仕事が減ってしまったミチルは、もっと安い家賃の家に引っ越すことを決める。
紹介されたのは、シェアハウスだった。
そこは、40代独身女性のみが入居できるといい、見学に行ったミチルは、住人たちの様子を見てすぐに入居を決めた。
いろんな悩みと過去を持った女性たちが、迷い、時には出ていく人を見送りながら、前を向こうと頑張る毎日を描く。

 大きな出来事があるわけではなく、本当にただそれぞれの毎日を淡々と描いている。
退屈だと感じる部分もあるが、ミチルがいつも何かしら考えていて、それを言葉にしているため、どんなことが問題になっていて、どうしようと思っているのかがじっくりと感じられる。
夢中になって読むという本ではないが、しっかり現実を見ているなぁといった感じ。

楡の墓


 北海道の開拓時代を綴る短編集。
開拓の指揮を執る者が次々と変わり、その度に方針も変わる。
工夫は金をもらえればそれに従うが、幸吉は己のやっていることがどこにつながるのか、未来が見えずにいた。
地元から逃げて蝦夷へやってきた幸吉には帰ることろもなく、拾ってくれた年上の女性の元からも出ていこうとしていた時、ふと見上げた楡の木の下で、幸吉は己の人生を振り返る。

 開拓に関わる者たちそれぞれの目線から見た北海道。
でも、なんだかまとまりがないなぁと感じていた。
そして印象に残ったものを見返すと、それだけが最初に雑誌掲載され、残りはそれを元に書き下ろされたものだったようだ。
北海道開拓の物語はどれも、どこか淋しい雰囲気が残るものばかり。

遺書配達人


 棟居刑事は出張先の四国霊場の遍路宿で一緒になった男に興味を持つ。その男は、行路病者やホームレスの遺書を遺族に届ける旅をしているという。
その日持っていた遺書は、新宿で襲われて死亡したホームレスで、娘に渡すはずだった1点物のネックレスが盗まれていたのだった。
東京に帰ってきた棟居が、コンビニ強盗事件の防犯カメラを見ていたところ、被害にあったコンビニの店員の女性がそのネックレスをしていることに気づき、棟居は関連を疑う。

 棟居が旅先で、出張先で出会う人とのやりとりが、事件につながっている。
それらの事件はきちんと解決もするのだが、棟居は別の真実を想像してしまう。
それはちょっと恐ろしい真実で、時には無理やりな事件もあるが、おおむね納得できてしまうため怖さが残る。
イヤミスとは違うので読後感は悪くないが、ちょっと人の裏の顔を覗き見る感じで人間不信にもなりそうだ。