倒産続きの彼女


 弁護士の美馬玉子は何もかも恵まれている先輩の剣持麗子が苦手だった。
なのに一緒に「会社を倒産に導く女」として内部通告された経理課の女性の身辺調査をすることになる。
確かに、彼女の年収では不似合いなブランドものを持っているし怪しいのだが、その会社での聞き取り調査をしている時、隣の部屋で首を切って死んでいる社員を発見してしまう。
そこは、通称『首切り部屋』と呼ばれる部屋だった。

 今回の主人公は剣持麗子の1年後輩。
訳あって祖母と二人暮らし。そして何でもできて美人で自信家の剣持麗子が苦手。
そんな彼女が麗子と組んで調べ始めた案件は、やがて自分の過去を知る事件となっていく。
思いのほか大きな事件となって驚くが、なんだかいたたまれなくなるような事実が判明して辛くなる。
だけどやっぱり、ドラマで重要な人物だった篠田が出てくる話が読みたい。

泥棒はスプーンを数える


 古本屋にやってきた客から頼まれた仕事を難なくこなしたバーニィ。
するとその客・スミスは、次の依頼をしてきた。
そんな中、刑事のレイが店にやってくる。
大きな家で一人暮らしをしていた老女が殺されたらしい。
いつものようにバーニィに容疑がかかっているのかと思いきや、なんと今度は恥を忍んでバーニィに知恵を借りに来たという。
自分のためではないのに、バーニィはこの事件を解決しなければならなくなる。

 今度はレイの方からバーニィの推理を聞こうとやってくる。
泥棒なのに探偵をやってきたバーニィにとって、これは一大事である。
自分のためではないのに仕事をするバーニィ。
でもちゃっかり美女と知り合いにはなっている。
これがきっかけで探偵をまっとうな仕事としないかと言われたバーニィだが、やっぱり彼の矜持には合わなかったようだ。

やさしい猫


 シングルマザーの保育士・ミユキさん。
災害地へのボランティアで出会った8歳年下の自動車整備士であるクマさんと、一年後に偶然再会してから付き合い始める。
そして何度目かのプロポーズでやっと結婚を決めた頃、二人に大きな問題が立ちはだかる。
ただ家族で一緒に暮らしたいという希望が奪われそうになり、必死で抵抗し戦う家族の姿を描く。

 語り部はミユキさんの娘であるマヤ。
誰かへの手紙のような語り口でさらさらと綴られるが、クマさんが外国人であるという理由で起こる大きな問題が暗くて大きな影を作る。
そして、勝率の低い戦いにも負けるもんかと乗り出す3人。
入国管理局で起こる事件が時々ニュースになるが、それを題材にしているので生々しい場面もあって、時に読むのが苦しくなる。
これは問題提起のために書かれた物語。

元彼の遺言状


 1年付き合ってきた彼から差し出された婚約指輪が安物だったためにその場で振り、翌日にはボーナスを減らされて頭にきて勢いで辞めてしまった弁護士の麗子。
そのままはけ口を探してずっと昔に3か月だけ付き合っていた栄治にメールしたことがきっかけで、その栄治の遺言に振り回されることになる。
 栄治は大手製薬会社の御曹司で、相続する多額の資産をめぐって「自分を殺した犯人に全財産を譲る」という遺言を残していたのだ。

 ドラマを見ていたのでそのイメージが強かったが、ドラマで最後まで存在感があった篠田が途中で消えてしまった。
それでも話は走るように進み、麗子のパリッとした性格のおかげで物騒な出来事もすっぱり切り捨てられ、ちゃんと栄治の考えた通りに収束させてしまう。
読みやすくて爽快。

名探偵じゃなくても


 いつもの居酒屋で飲んでいた三人は、紳士然とした男性・我妻に声をかけられた。
彼は、かつて小学校の校長を務めていた楓の祖父の教え子なのだという。
今は認知症を患っている祖父だが、今でも楓が持ち込む相談事を聞くと頭がさえ、名探偵のごとく謎を解いていく。
そんな祖父に、我妻は相談があるという。

 少しづつ進む祖父の症状に心を痛めながらも、謎を解く時に見せる顔が見たくて通う楓。
ただ、岩田と四季の楓への思いが語られるうちだんだんうさん臭くなっていく。
それは楓に魅力が感じられないためで、都合よくプリンセスに仕立て上げられて行っている。
極端な自己犠牲に走る四季にも同情しにくい。

泥棒は深夜に徘徊する ― 泥棒バーニイ・シリーズ


 仕事の決行は週末と決め、今夜は下見だけのつもりだったのに、どうしても別のいい場所を見つけてしまったら立ち去れなくなったバーニィ。
しっかり道具も持っていたことから、忍び込むことに成功するが、そこでまたもや住人が帰ってきてしまう。
ベットの下に隠れたバーニィ。
そこで彼は、なんとも嫌な場面を見てしまう。
さらに、偶然その一画で別件の強盗殺人が発生しており、街角の防犯カメラに姿をとらえられていたために、今度は殺人の容疑者になってしまう。
そこでバーニィは今度も自分の無実を証明するために走り回ることになる。

 偶然だと思われたことが仕組まれたことだったり、そこにバーニィのちょっとした嘘も混ざってますますややこしくなってくる。
そして国をまたいだ犯罪に絡んできて歴史の知識も手に入り、バーニィはすっかり探偵となってしまう。
今回はちょっとわかりにくかった。
最後のキャロリンとの種明かしが楽しみになる。

累犯障害者


 刑務所内にいる受刑者には、障碍者も多くいた。
彼らは障害があるがゆえに、裁判で自分の気持ちを表現することができずに重い刑をそのまま受け入れてしまっていたり、通常の作業ができないために隔離されていたりする。
精神障害者、知的障害者、認知症老人、聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者の彼らの話を聞いて、今ある日本の問題を訴える。

 福祉の手からすり抜けてしまった彼らがどうして罪を犯したのか。
そしてそんな彼らは出所後どうなるのか。
障害の理解が充分ではない時、どう扱っていいかわからずに放置される。
珍しく小説ではないけど、読みやすく、わかりやすかった。
福祉がいかに届きにくいかと強調されていた。