三人書房


 作家となる前の江戸川乱歩が、兄弟で営んでいた古本屋。
そこへ持ち込まれるのは、松井須磨子の遺書らしいと言われる手紙や、浮世絵の贋作の噂など様々。
同じ時代を生きた宮沢賢治や高村幸太郎などとの交友と、不可解な事件に興味を持つ若き日の乱歩。

 第18回ミステリーズ!新人賞受賞作。
乱歩が興味を持つのは、不可解な事件。
それを、知人を通して現地をみにいったりして謎を解いていくのだが、三兄弟の個性は特徴的なのになぜか区別がつきにくい。
古本屋をやっていたわずか二年の間の出来事とあって儚いイメージがあり、乱歩が独自に調査して製本し、こっそり値札をつけてやなに並べていた本というのが興味を引くが、それについては関連してこなかったのが残念。
読みにくかった。

女たちの江戸開城


 慶応四年、鳥羽伏見の戦いに敗れた十五代将軍徳川慶喜が江戸へ逃げ帰って来た。
江戸へ向かって官軍が進発しようとしている中、慶喜の弱腰を非難する者もいたが、慶喜は江戸を戦場にしたくないと言い、自ら蟄居する。
そこへ、慶喜から朝廷との仲立ちを頼まれた皇女和宮の密命を受けた大奥上臈・土御門藤子が、京都へ向け命がけの旅をすることになった。

 藤子が持つ和宮の親書を、京都の帝へ。なんとしても。
人がたくさん死んでいく戦をなんとかして止めるため、そして和宮を京都へ戻すため、藤子は急ぐ。
その旅の中で護衛としてついてきた者たちとの絆も生まれるが、死んでいく者もいた。
怖い思いを何度もしながら、大奥で地位のある立場だった藤子がやり遂げるのは2度の旅だったのだが、話は旅のことだけだった。
江戸開城というタイトルなのに、城のことも大奥のこともほとんどなく、ただ急いだ命がけの旅のことばかり。
藤子と仙田のことは気になるが、タイトルとの違和感が大きかった。