うめ婆行状記


 北町奉行所同心の夫・霜降三太夫を卒中で亡くしたうめは、一度でいいからやってみたいと思っていたことをすることにした。
堅苦しい武家の作法から離れて、一人暮らしを始める。
手頃な家を借り、庭に生えていた梅の木になっている実をもいで梅干しに。
そして昔の知り合いがお隣さんだと知り、うめは楽しみが広がってうれしくなる。
ところが、甥っ子の隠し子が現れたり、お隣のおかみさんが亡くなったりと、ゆっくりする時がない。

 未完の遺作。
気の強そうなうめは、始めは意地っ張りの印象が強かったのだが、だんだんと母の顔、叔母の顔、義姉の顔と、いろんな面を見せてくれる。
周りの人たちをうまく橋渡しもして、家から離れて客観的な目をもったうめから見た、ご近所親戚ひとまとめの日常が楽しそう。
うめ自身の老いも語られてきた頃に唐突に終わってしまったのでとても淋しい。

Twig


使用糸:ハマナカ Pure Merino(17)、ウイスター エーデル(51)
編み図:まきもの より
     Twig 130 g、6号針

前作と色違い


孤虫症


 主婦の麻美は、夫には言えない”趣味”を持っていた。
週に3度、それぞれ曜日によって決めた男たちと逢瀬を習慣にしていたが、男たちが次々とおかしな症状で原因不明の死を遂げる。
やがて麻美自身もおかしな音に困らされ、腹部の痛みを感じ、やがて体中に虫が入り込んでいるように感じられ、手を切り落として失踪してしまう。
それは、麻美から相談を受けていたという妹にも起こる。これは忌まわしい家族のつながりのせいか。

 奇妙で、気味の悪い話だった。
近所の人たちの薄暗い悪意や、母親からの開き直った悪行、周りのすべてから責め立てられるような不気味な出来事は、やがて気が狂わんばかり。
しかもそれは麻美の身に起こったことか、妹か、母か。女たちの嫉妬も絡まり、道筋を立てて考えることができなくなりそうで、しばらく違和感と嫌悪感でいっぱいになる。
この手の話は苦手。

高校事変 XII


 長男の架禱斗がこれまで計画してきたことが実行に移された。日本は武力による支配の元へと下り、法律も警察もあてにできなくなってしまう。
その中で結衣は、亡き母が残した遺産を受取るため富津市の東京湾観音へ向かい、隠された意図を知る。
結衣をおびき寄せるために用意された舞台は、かつて矢幡元総理夫妻の関与が取り沙汰され、疑惑の中心として世間を賑わせた挙句、開校されないまま放置された茅ヶ崎の森本学園。そこで兄弟がそろう。

 決着をつけるために死ぬべきだと決意をする結衣。
そこで行われた戦闘は国家存続をも賭けた戦いで、結衣はどんな決着を選ぶのかと思っていたら、ほかのシリーズの登場人物がさらりと現れる。
死ぬつもりだった結衣が、生きるための思考へと変更した頃からのスピード感は想像を超えた。
ラストシーンでは、やっと終わったのかという安堵感。長かった。

スター・シェイカー


 人類がテレポートの能力を持ち、道路が不要になった世界。
事故によってテレポート能力を失った赤川勇虎は、仕事の帰りにゴミ箱に隠れていた少女と出会う。
彼女は、違法テレポートによる密輸を行う組織から逃げていた。
組織から命を狙われながら逃げるうち、勇虎は古典テレポートと言われる能力に目覚め、宇宙の根幹に関わる秘密に足を踏み入れることになる。

 壮大なスケールでテレポート社会の闇を描き出す。
人類の7割がテレポートの免許を持ち、今や遺跡となった高速道路、まるでホームレスのような位置に置かれた人々が自治をする地域があったり、地球の行く末を憂う研究者たちがいたりと多彩。
しかし主人公の個性があちこち迷走していたり、描写があいまいで世界感が想像しにくいため読みずらかった。
テレポートが軸にはなっているが、物理がのっかってきたり生物の世界だったり、果ては宇宙のありようだったりと、人物同様まとまりがないように感じた。
せめてどんな環境なのか街並みが想像できればよかったが、わかりにくいというのが一番。

プルオーバー



使用糸:ごしょう産業 毛糸ZAKKAストアーズ Novel(01)
参考編み図:アイスランドのロピーで編むノマドのニット から
       降り注ぐ雨の丸ヨークセーター
使用針:10号、12号輪針 456 g

月下美人を待つ庭で


 小柄で猫目、大きな黒い上着のせいで黒猫を想像させる容貌の持ち主。
30過ぎにもかかわらず定職につかず、異様な好奇心であらゆることに首を突っ込むという変人の猫丸先輩。
電光看板の底に貼り付けられた不規則なアルファベットの文字列や、1時間だけ消えた愛犬の謎、毎夜不法侵入される家など、さらさらとしゃべりながらいつの間にか納得させられている。
早口なのに聞きやすいというその口調で、謎と警戒心を解いていく短編集。

 おっさんなのに小柄で、猫のようにするりと現れる。
話出すと長くて古風な表現も多いが、なぜか気になって最後まで聞いてしまうという不思議な猫丸先輩。
分かってみると何でもないことを大事件のようにして思わず信じさせてしまったり、あっさりと真実を話してしまったり、いろんな面を見せて楽しいが、長い話がちょっとたいくつ。
表紙が印象的で、その話もほっこりする終わり方なので憎めない。

お化けのそばづえ


 子供のころからお化けが見えた。そいつらは真っ黒な顔で襲ってきて、おれ・須磨軒人はいつも怖い思いをする。
時に人に取り付いて凶行を起こすお化けは、どこへ引っ越してもやってきた。
しかし軒人はやがて結婚し、子供ももうすぐ生まれるときになって、妻にとりついたお化けが自らを殺そうとしている場面に出くわし、もう逃げ出せないと決心する。
霊能力者、お祓い、お札、様々な手を使って、自分と家族を守るためにあらゆることを試す軒人。

 お化けに襲われ、ずっと怖い思いをしてきた主人公。
訳も分からずただ見える人の話かと思ったが、ちゃんと理由が明かされる点では解決を見た分納得はいったが、ひたすら怖がっているだけの軒人の様子が話のほとんどで、うんざり。
参考文献もいくつかあったので、もう少し詳しく土地に絡めた信仰についての話が出てきたらよかったなと思う。

Twig


使用糸:ハマナカ Pure Merino(1)、ウイスター エーデル(51)
編み図:まきもの より
     Twig 140 g、6号針

引き上げ編みの帽子とブリオッシュ編みのハンドウォーマー


使用糸;元廣 Soft WoolMix(705)、リッチモア メインクーン(3)、毛糸ZAKKAストアーズ Foire(26)
編み図:大切に使いたい手編みの小物 より
      カスタマイズ帽子 100 g 8号針
ハンドウォーマーはオリジナル 55 g 8号針