ヘンリーボーン柄のストール


使用糸:パピー NEW 2PLY(220),リッチモア エクセレントモヘア〈カウント10〉グラデーション(107) の2本どり
編み図:NHK すてきにハンドメイド 2022年 5月号 より
     ヘンリーボーン柄のストール 10号針 102 g

若旦那のひざまくら


 京都、西陣織の老舗の一人息子との結婚を決めた芹。
打ち込んでいた仕事も辞め、京都へとやってきて婚約者の両親と顔を合わせれば、しょっぱなからいくつも繰り出される「いけず」に戸惑い、京都ならではの文化に振り回される。
でもめげない。
大好きな彼との結婚のため、芹は打開策を練る。

 かみ合わない会話に頭を抱え、その裏を読み取ってうんざりする芹。
笑顔でやんわり嫌みを言う母親と彼の美人の幼馴染に、よくもここまでと嫌悪感が沸く。
京都特有のいじわるのバラエティに関心して、陰湿さに慄き、受けるだろうダメージを想像しては勝手にくじけそうになりながら、芹はなぜこの場面でこれほど頭を切り替えられるのだろうかと考える。
そして、いつしか一人づつ陥落していく様子は頼もしく、その発想とパワーはすごい。
ピンチってこんな風に乗り越えていくと気持ちいいだろうなと素直に思える。

Butterfly World 最後の六日間


 羽を持ったアバター、バタフライが生息するVR空間〈バタフライワールド〉にログインしたアキは、ずっとログアウトをしないでいられる人たちが住むという〈紅招館〉に行きたいと願っていた。相棒のマヒトと共に探し出し、やっとたどり着いたところで、トラッキングによってその〈紅招館〉周辺に地形変更プログラムが書き換えられてしまうという事故が起こる。閉じ込められた住人とアキたち。
 すると、非暴力が徹底されているはずの〈バタフライワールド〉で、殺人が起こってしまった。

 〈バタフライワールド〉が、アキに関係する12年前からの因縁によって壊れようとしていたことが分かってから、物語のスピードが上がる。
ちりばめられた謎を推理していくことを作者が願っていて、ヒントも与えられていたが、分かったのは半分ほどだった。
それでも、現実とVRを行き来するように、物語に入り込むことと推理とを交互にやりながら、たった6日の出来事を充分楽しめた。

楽園のアダム


 大厄災により人類は1%未満まで減少し、あらゆる問題を解決するために作り出された人工知能の「カーネ」により生活や判断、結婚や出産までも管理される世界。
しかしカーネのおかげで争いはなく、様々な役割をもった集団によって生活は十分に潤い、安定した人生を送れる時代。
「知識の島」で研究に勤しむ主人公・アムスは、ある日大好きなセーファと共に偶然死体を見つけてしまう。
それは良く知った人物で、しかもむごたらしい拷問の末、心臓を一突きにされた助教授だった。

 暴力などなく、平和で穏やかな暮らしをしていた島に、突然起こる不穏な出来事。
それは、助教授が南極から持ち帰った未知の哺乳類のせいだという。
その生き物によって幾人もが殺され、やがてアムスが聞かされるその哺乳類の真実に驚かされる。
情報が管理され、故意に知らされない事がある世界では、当たり前の自然であっても驚異となる。
それにしても、未知の哺乳類の獣っぷりはひどかった。ろくでもない性質のものを選んでしまったのか、知らないゆえの恐怖で大げさになっているのか。
そして男女の区別はあって知識もあるのに、割り当てられることに疑問がわかないのは不思議。

広重ぶるう


 定火消同心の子として長屋で生まれた重右衛門は、幼いころから絵が好きだった。
町絵師なら簡単になれると思い人気の豊国に師事しようと訪れたが門前払いされ、銭を稼げるならだれでもいいと、次に豊弘の門をたたいた。
しかし、広重という名をもらい、独り立ちしても一向に売れず、美人画は「色気がない」、役者絵は「似ていない」と酷評されるしまつ。
貧乏暮らしの中、ある日なじみの版元である喜三郎から見せられたうちわ絵に衝撃を受ける。
それは、まだこの国ではで広まっていない、ベルリンから来た顔料「ベロ藍」だった。
広重は、この青でしか描けない江戸を書きたいと、生涯思い続ける。

 これはじっくり読みたいと思っていたのに、気づけば止められなくなっていた。
そういえば北斎の話も、娘のお栄の話も、国貞の話も読んだことがある。
江戸の絵師、浮世絵師の話は多く、そのどれもがエネルギーにあふれていて面白い。
苦悩し、腐ったりもしたけど誰からも見捨てられないのは広重の人徳。
ベロ藍で刷られた空や川の色を実際に見てみたい。

和菓子迷宮をぐるぐると


 どんなことでも真面目にどこまでも考え、無意識に数式が出てくるような大学生・涼太は、大学院に進むかどうかを悩んでいた。
そんな時、育ての親である叔母に付き添っていった菓子展で、衝撃的なほど美しい和菓子に出会う。
一目で虜になった涼太は、大学卒業後、製菓専門学校に入学し、そこで答えの出ない追求と研究に苦悩しながらも、和菓子の深い底なし沼へとはまり込んでいった。

 物理工学から和菓子へ。すっきりと数式で表すことができる世界から、五感と好みの世界へと転身を遂げた涼太は、そのギャップにさぞ悩み抜いているだろうと想像するが、彼の気性は悩みながらもその悩みを探求していくという、理論的な解決方法を持ち出す。
その独特な視点から、同じ班の級友たちとも不思議に打ち解けていく様子が楽しい。
美味しい小豆餡の作り方を研究する様子や、解がたくさんあって困惑する様子は理系の性分だろうが、師匠や先生は感性と個性に気づけと助言してくる。
進路をがらりと変えたのに、少しも後悔していない涼太が清々しい。

女たちの審判


 死刑囚・梶山智樹。
彼が殺人を犯した訳、彼に友情を感じる看守、ハト行為と言われる不正をして梶山にメモを届けた刑務官、娘がいると知り、一目会いたいと脱獄を計画する梶山。
一人の死刑囚を中心に、拘置所内で起こる様々な人間模様。

 全体的に暗く、平坦な語り口調で進み、時に数年を飛び越して、梶山が逮捕されてからを描く。
判決を言い渡した裁判官や、家族にも視点を向けて、梶山からだんだん広がっていくため梶山の人となりは少しづつ見えてくる。
それでも事件を起こした理由は語られず、タイトルの「女たち」と限定されていることにも疑問が沸いた。
そして、最後に明かされる関係者たちのつながりがちょっとわざとらしく感じた。

菜の花の道 千成屋お吟


 よろず御用承り所『千成屋』の女将お吟。
京橋の呉服問屋・天野屋からの相談は、娘のおはつの亭主・多七の悪書通いを辞めさせたいという依頼だった。
天野屋は、以前おはつの婿になるはずだった佐之助が何者かに襲われ、顔に傷を負ったために破断になったという過去があった。
多七を調べ始めると、佐之助を切った犯人が江戸にいることをつかむ。

 お吟を助けてくれる人がたくさんいて、皆それぞれに頼もしく、人情もある。
よろず困りごとという幅広い仕事のため、人探しから観光案内、縁談やかたき討ちなど、本当にいろいろで、町人もお武家も関係なく関わるので飽きることがない。
ただ今回は悲しい余韻が大きかった。
お吟の行方不明の亭主の消息が分かるときが来るのだろうか。

四十過ぎたら出世が仕事


 四十歳で課長に昇進した阿南が着任早々に起こるトラブル、無能な上司にイライラが止まらない石渡課長、中途入社だけど優秀と評判な和田課長には秘密があり、コネと言われたくなくて創業社長の息子であることを秘密にしている平松は失敗続き。
広告代理店の、不惑を迎える者たちの仕事に対する苦悩が、6人の視点から描かれる。

 どんな社風の会社で、どんな立場にあるのかで全く変わる心意気。
良い会社にしたいと思うか、楽しく働きたいと思うか、権力を持ちたいか。
結局どんな立場でいようとも、気に食わない人はいるもんだし、あの人のことに考えが及ばなかったと悔やんだところでそれもまた一面。
反対の面では絶賛されたりもしていて、自分のところには伝わってこないものも多い。
どんなことを「出世」とみなす?と問われているよう。

プルオーバー、帽子、ハンドウォーマー



使用糸:ごしょう産業 Rover(05)
参考編み図:ふたりのニット 彼サイズと自分サイズで編める から 
       スウェット風プルオーバー 527g
帽子(87g)とハンドウォーマー(42g)はオリジナル