和菓子迷宮をぐるぐると


 どんなことでも真面目にどこまでも考え、無意識に数式が出てくるような大学生・涼太は、大学院に進むかどうかを悩んでいた。
そんな時、育ての親である叔母に付き添っていった菓子展で、衝撃的なほど美しい和菓子に出会う。
一目で虜になった涼太は、大学卒業後、製菓専門学校に入学し、そこで答えの出ない追求と研究に苦悩しながらも、和菓子の深い底なし沼へとはまり込んでいった。

 物理工学から和菓子へ。すっきりと数式で表すことができる世界から、五感と好みの世界へと転身を遂げた涼太は、そのギャップにさぞ悩み抜いているだろうと想像するが、彼の気性は悩みながらもその悩みを探求していくという、理論的な解決方法を持ち出す。
その独特な視点から、同じ班の級友たちとも不思議に打ち解けていく様子が楽しい。
美味しい小豆餡の作り方を研究する様子や、解がたくさんあって困惑する様子は理系の性分だろうが、師匠や先生は感性と個性に気づけと助言してくる。
進路をがらりと変えたのに、少しも後悔していない涼太が清々しい。