生き物の声が聞こえる美苑は、植物学者で大学教授の父と、厳格な華道師範である母親と住む家の中庭やアトリエで、生き物たちの言葉に耳を傾けるのが日課だった。
学校では「空気が読めない」と言われて友達もいない。
ある日、優しく見守っていてくれていた父が急逝して落ち込む美苑に、父の友人であった児玉先生から、大学の植物園で飼育されている子供のグリーンイグアナを育てないかと提案をうける。
その日からは「ソノ」と名付けたイグアナと、父の残したアトリエで幸せに暮らしていたが、突然母から呼び出され、「半年以内に結婚するように」と言われてしまう。
小さな生き物の声が聞こえるが、話ができるわけではない。
代わりに人間の友達がいないが、少しも淋しくはない。
そんな美苑に課せられた、結婚という試練。
荒唐無稽に見える能力も、なぜかすんなり受け止められる不思議な物語。
苦手な人間付き合いと、居心地のいい場所から離れたくないのに惹きつけられる研究との間で悩む美苑の成長に優しいイグアナが母のように寄り添う。
優しい物語。
