不見(みず)の月 博物館惑星Ⅱ


 遠くアステロイドベルトから捕まえてきた惑星を月の反対側の重力均衡エリアにおき、まるごと博物館にした〈アフロディーテ〉。
そこでは、データベースを脳に直接接続した学芸員が、美の追求に勤しんでいた。
 そこへ配属された新人自警団員の兵藤健は、展示管理やマナー違反をする客たちとのかかわりの中で起こる事件に対処ししていく。
さらに健は、情動学習型のデータベースを育てる役までもらっていた。

 なんと19年ぶりだという「博物館惑星」の続き。
細かいところは覚えてないけど、印象は強く残っていた。
そして覚えてなくても充分楽しめたし、美術に興味がなくても、表現方法としての化学技術に興味が沸き、見てみたいと思い切り想像する。
どんなしくみなのかを思い浮かべながら、学芸員たちの人間としての感情と、人工知能との違いを楽しみ、さらには思い切り人間臭い家族のしがらみなどの対比も面白い。
でもタイトルになっている「不見の月」はなんだかありふれていてつまらない結果になった。
楽しい時間だったのに、最後でガッカリして終わったことが残念。

烙印(下)


 自転車に乗っていて死亡した女性、プールで突然死した恩師。
一見事故死に燃えるが、妙な共通点があり、ケイは感電死の疑いから人為的なものを感じ取っていた。
そしてまたも届く不気味な脅迫メール。
ケイに忍び寄るキャリーの影がだんだん濃くなっていく。
休日の予定を台無しにされ、疲労困憊して自宅に戻ったケイが目にしたのは、信じがたい出来事だった。

 堂々と目の前に現れるキャリー。
感電で死んだ人たちの真実が一瞬で分かったシーンは衝撃的だった。
よりによって家族が集まる自宅での出来事は、より一層恐怖をあおる。
しかしキャリーはまたも生き延びる。
ケイの恐怖や疑心暗鬼の描写だけで終わっていた今までのうっとおしさがやっと緩和された。

烙印(上)


 チャールズ川沿いに自転車に乗っている間に23歳のエリサ・ヴァンダースティールの死体が発見される。
頭上の街頭のガラスが散らばり、ヘルメットや自転車とも数メートル離れていた。
月に一度のベントンとの憩いの時間をマリーノの電話で中断されたケイは、すぐにその場に向かう。
そしてケイには、匿名のサイバー暴力団から奇妙なメールが立て続けに送られてきていることも不安要素となっており、ルーシーに助けを求めた。

 不審なメールのことでイライラさせられながらも、ベントンとの時間をすごしていたケイが呼び出されるまでに、半分のページが使われている。
やっと事件が起こったころには飽きてしまっていた。
キャリーが関わっていることは明らかだろうが、まだそれも示していない。
ケイの不満が長ったらしく書かれているため、読んでいて気分が暗くなる。

邪悪(下)


 キャリーの予想通りの行動をしているのではないかと、すべてのことに不安を感じるケイ。
ハリウッド女優の娘と、ルーシーやジャネットが知り合いだったかもしれないと思い、ルーシーの唯一安心できる場所までもFBIに暴かれ、そのFBIの行動はきっとベントンも知っていたはずと、疑心暗鬼が膨れ上がる。
そして、最初に出向いた現場で聞いた大きな音の正体を突き止めるため、結局は最初の場所に戻ることになる。

 今回もケイの気分は振り回されるばかり。
そしてベントンに裏切られた気分になり、誰も信じられないと感じ、口喧嘩をしかける。
ここのところ、事件そのものはあまり印象に残らなくて、ケイの精神的な浮き沈みがメインになっているよう。
最後は何事もなかったかのような団らんで終わるのも同じ。
ただ、今回は衝撃的な虐待に出くわした。しかし肝心のキャリーは姿を見せずじまいなので、直接対決は持ち越しか。

邪悪(上)


 海の中で太ももを撃たれて2か月。復帰したケイが現場で検死をしていた時、ケイの携帯に1通のメールが届く。
そのメールには、17年前、ルーシーがまだFBIの寮にいた頃の映像が添付されていた。
一時停止も巻き戻しもできず、ただ見続けることしかできない動画に、ケイは仕事の集中力を乱され、すぐさまルーシーに会いに行く。
するとそこでは、FBIがルーシーの家の家宅捜索をしていた。

 天敵との命がけの再会の後、やっと仕事に戻れたケイのところに送られてきたメールは、キャリーが何年も前から計画していたと言わんばかりの不気味なメール。
そして、ルーシーが丁寧に作り上げた安全な場所を踏み荒らされている場面に出くわして、ケイは動揺する。
仕事どころじゃないケイの様子は、恐れでいっぱい。
やっと仕事に頭が向いたころにはもう次巻で、恐怖と不安のやりとりばかりの上巻だった。
検死中の事件と関係があるのかが気になる。

バチカン奇跡調査官 王の中の王


 オランダ・ユトレヒトの小さな教会からバチカンに、「礼拝堂に主が降り立って黄金の足跡を残し、聖体祭の夜には輝く光の球が現れ、司祭に町の未来を告げた」という奇跡の連絡が入る。
ロベルトと平賀は、42人もの目撃者すべてに話を聞き、主の足跡の調査を始めた。
小さな教会にのこされた聖遺物。そしてそれが収められていたステンドグラスのケースまで。
そこで二人が見つけたものは、大昔の隠し部屋と隠し通路、そして聖遺物が持ち込まれた時代の宝だった。

 一つの奇跡のはずが、当時の先端技術や流行にまで広がり、教会の存在した年月の長さを感じさせる。
追及自体は興味深いし、盗賊は天の罰を受けたような形で見つかって、奇跡調査は終了する。
それでもなんだか消化不良な感覚が残るのは、解明された現象がどんな風なのか、想像ができないからだろうか。

リーフ模様の丸ヨークセーター


使用糸:ハマナカ ソノモノロービング (95)
編み図:天然素材で編む 大人のナチュラルニット より
    リーフ模様の丸ヨークセーター 466 g 12号針

〈銀の鰊亭〉の御挨拶


 高級料亭旅館〈銀の鰊亭〉は、1年前に火事で離れが全焼し、当主夫妻が亡くなり、助けに向かった娘の文は怪我を負った上に記憶を失う。
そこへ、大学入学を機会に一緒に住むことにした文の甥の光が加わった。
ある日刑事だという磯貝が光に声をかけ、あの火事は事故として処理されたが、実は当主夫妻と共に身元不明の男女の死体も発見されていたと教えてくれる。
光は礒貝と共に、真相を追い始めた。

 火事での身元不明の男女の件はなかったことにされており、すでに捜査は終了しているため大きく動けない礒貝を助けるために、光はいろいろと考えるが、突然の文の「記憶をなくしてから身についた不思議な力」が出てきたとたんに急に陳腐になった。
そしていくつかの事実を見つけたにもかかわらず、結末はなんとも肩透かし。
文のおかしな力もそこまで活躍はせず、いったい何のためだったのか。

オフマイク(スクープシリーズ)


 継続捜査を担当する捜査一課特命捜査係の黒田と矢口。
黒田の同期・多岐川から二十年前の大学生自殺について、不審な点があるが確証がないため、こっそり調べてほしいと依頼される。二人が聞き込みを進めていると、「ニュースイレブン」の報道記者・布施もこの事件に目を付けていると知る。
交友範囲の広い布施と情報交換を始めた黒田たちは、IT業界で注目の藤巻という男に注目した。

 ニュース番組のメンバーと継続捜査の刑事たちの、奇妙な協力捜査。
交互に語られるそれぞれの捜査が、やがて20年間隠されてきた事件の真相を突き止める。
でも、事件を追う人物が多すぎて一人一人の印象が薄い。
布施の飄々とした雰囲気にのまれる感じで、みんながいいなりになっていくよう。
もっと個性のある人たちが欲しい。