名探偵誕生


 小学4年の僕は、呪われると噂のある隣町の「幽霊団地」へ、クラスの仲間たちと冒険に出た。
姿を見ると刃物を持って追いかけてくるというシンカイに出くわしたが、なぜかシンカイが目の前から消えてしまった。
その不思議を相談したのが、近所に住む奇麗で優しい名探偵の「お姉ちゃん」だった。

 小学生の小さな冒険から、中学生になって出くわした小説家先生へのストーカー、高校では他行の文化祭で起こった展示物損壊事件、そして大学と、僕が成長していく。
そして必ずお姉ちゃんが、冷静に知恵をいかして名探偵となっていた。
成長するにつれ謎や事件は大ごととなり、最後には世間を騒がせる大事件となってしまう。
でも少しづつ成長する主人公たちと一緒にこちらも事件に慣れ、推理の仕方も考えるようになってきた。
事件や探偵の話というより、一人の少年の成長日記といった雰囲気。

第四の扉―ツイスト博士シリーズ


 オックスフォード近郊の小さな村。
そこには、数年前に全身を切り刻まれて死んだダーンリー夫人の幽霊が出るという家がある。
その屋敷に、霊能力を持つという美しい妻を連れたラティマー夫妻が越してきた。
さらに、屋根裏から足音がしたり、光が見えたりと不可解な事が続き、屋根裏部屋で行われた高齢実験のさなかにまた密室殺人が起こる。

 小さな村で起こる不気味な事件。
次々に起こる不可解な出来事と、おかしな住人。
かなり不安が募ってきた頃、突如世界が入れ替わってしまう。
これまでの出来事は入れ子のような状態で架空のものとなり、その後の進み方に慣れるまでに終わってしまった。

ブラック・ショーマンと覚醒する女たち


 隠れ家的なバーのマスターは、元マジシャン。
その店に訪れる客の不審な行動を見破り、または
 亡き夫から莫大な遺産を相続した女性の前に絶縁したはずの兄が現れて、「あんたは偽物だ」と言い張り、金を請求する。
妹は本物か偽物か。
バーのマスターが、華麗なマジックで謎を解く。

 映画化している作品。
マスターのうさん臭さがもっと欲しかった。
なじみ客を大事にするやり方は良いが、何も知らせず姪を模擬強盗の人質にして、本物のナイフを首にあてがうといったやり方がひどすぎる。
そのせいで後味がとても悪かった。

月虹の夜市 日本橋船宿あやかし話


江戸・浅草川に浮かぶ島、箱崎の小さな船宿「若狭屋」の女将である涼。
幼いころに妖の嫁になることが決まっていたお涼は、普通の人が見えないものが見える。
そして彼ら妖たちから頼みごとを去れると断れない。
片目片足の小僧の探し物や、蹴鞠の神様たち。
彼女のそんな性質は、親から受け継がれたものだった。

 今回は、お涼の物語より父と祖父の物語が多かった。
彼らがどんな出会いがあって、どんな妖と交流が合って、お涼へとつながったのかがたくさん綴られていた。
不思議と優しい妖たち。

記憶の対位法


 自分が生まれる7年も前に死んだ祖父の遺品をかたずけることになったジャンゴ。
対独協力者として断罪され、一族から距離を置いていた祖父が晩年過ごした寒村の家で、ジャンゴは大量の書物と二十ほどの小箱を見つける。
遺品の中でただその小箱だけが、祖父の人となりを表すものだった。
そしてその箱から見つかった古く小さな紙片。
ジャンゴは西洋古典学を研究する大学院生ゾエと共に、その紙片の来し方を追求していく。

 「図書館の魔女」と同様、こちらも深い考察が多いため難しい専門知識の話がたくさん出てくる。
その道の研究者とゾエとの討論や、ジャンゴへの説明は大学の講義のよう。
そのため半分くらいはわからないままだった。
そして最後もなんだかよくわからないまま祖父への考察と、今を生きる自分たちへの応援で終わる。
ダヴィンチ・コードのような真実も解決もないので、長く読んできた割にしっくりこない。

PIT 特殊心理捜査班 水無月玲


 ビッグデータ解析による犯罪予測システムを開発している蒼井俊。
プロファイリングをするチームと一緒に、東京で起こった連続猟奇殺人犯“V”を追う。
足で捜査が信条の捜査員たちとぶつかりながらも、プロファイラーの水無月玲が率いるPITと共に捜査を進める中、現職のけいさつかんが惨殺されてしまう。
また、AIとプロファイリングとは違い、刑事の勘ともいうべき人に蓄積されたデータが告げた犯人にも注目が集まる。

 それぞれの得意分野から迫る事件だが、最後はなんだか拍子抜けしてしまう。
これは隠された事実だけど、これまでのミステリのようなあちこちにヒントがあるような感じではなかったため、予測できない。
そしてある意味よくある結末だった。

亡霊の烏 八咫烏シリーズ11


 雪哉こと博陸侯雪斎が独裁を敷く〈山内〉。
これまで存在が注目されてこなかった奈月彦の弟である凪彦が金烏代となった〈登殿の儀〉を経て皇后を選んだ。
ところが、いつまでたっても二人に子ができる気配がない。
一方、博陸侯によって滅ぼされた谷間から逃げ出したトビは、北家の朝宅で捕虜となっていた。

 2章になって、雪哉を外から見る視点での話が続いている。
でもそれらは誰か一人に注目しているというよりは雪哉を周りから見ている人達として視点が移り変わるためか、話が進んでいるような気がしない。
そのためか、誰にも感情移入しないまま争いばかりが起こり、物騒な話のまま進むため、1章のような没入感や読み終わった後の満足感が少ない。
なによりも雪哉を始め1章でメイン人物だった人たちの人物像が壊されるような描写ばかりで、全く違う話に思えてしまい、この世界を楽しむことができなくなってきた。

図書館の魔女 高い塔の童心


 一ノ谷にある高い塔。そこはあらゆる書物が集められた知の塔。
そこにいる「高い塔の魔法使い」と呼ばれる老人タイキは、このところ忙しい。
近隣との戦争がはじまりそうなため、国の権力者は寄り集まり、日夜情報と戦略の会議が行われていた。
そんな頃、タイキのもとで孫のマツリカは、好物の海老饅頭の味が落ちたことを疑問に思い、原因を探り始める。

 マツリカの幼いころの話。
もうすでにその頭脳はすばらしい。
自分の好きなものが食べられないからという理由だが、結果的に戦争を防ぐ。
しかし相変わらずの難解な説明と語彙で読みにくさは変わらずで眠くなる。
「まほり」ではそんなことはなかったので、「図書館の魔女」の世界感がその設定なのだろう。

怪盗インビジブル


 うちの中学の七不思議には、どこにでもあるようなものと、他では聞かないようなものとがある。
その珍しい七不思議は、「人が一番大事にしているものを盗んでいくという怪盗インビジブル」がいるということだ。
そして、現場には決まってネコが描かれた黄色い付箋が残されているのだった。
受験勉強をするために卓球部を辞めたケンは、なぜかラケットが入ったカバンが無くなる。
後日カバンは見つかるのだが、なぜかラケットが入っていなかった。
 この学校に伝わる七不思議の「怪盗インビジブル」とは、いったいどんな奴なのか。

 大事にしていたアイドルとのチェキ写真、小学校からの仲良しの友達が持ち始めたスマホなど、本人にとって大事なものが消える。
そのせいで生徒たちに起こる変化の元となった「怪盗インビジブル」」は、昔学校で起こった事件が発端だったことが分かる。
大きな出来事で、その話自体は面白いが、それまでの生徒に起こる小さな怪盗事件は退屈だった。

リミックス ~神奈川県警少年捜査課~


 神奈川県警少年捜査課の高尾と丸木のところに、管轄内にある高校の生徒・賀茂が失踪したという報せが届く。
賀茂は古代の霊能者・役小角の呪術力を操る不思議な少年だった。
高尾を丸木は、賀茂が調べていくと、どうやら川崎の半グレたちのところへ向かったという。
怪訝に思いながらも辿っていくと、賀茂は半グレたちと「ただ話をしていた」だけだといい、やがて人気ボーカリストのミサキを巻き込んだ誘拐・監禁事件へと発展する。

 エンノオズヌが降臨するという賀茂。
その彼が半グレたちと接触を持ったというので大ごとになりかけたが、本人はケロリとしている。
ミサキが芸能事務所との契約をすると聞き、半グレたちや反社会的勢力との関りをも危惧されるが、結局は賀茂によって事件ではなくなっていく。
最後はちゃんと解決はするけど、やっぱり不思議な事は現実に持ち込むと、どこか胡散臭い。