浅草天王町の札差、坂田屋の娘お亀久は、幼いころかどわかしに遭い、その時助けに入ったぼて振りの魚屋が切り殺されるのをまじかに見てしまう。
それ以来、男と血が怖くなり、外に出ることもできなくなる。
さらに許婚である材木問屋、万紀の長男紀一郎が紀州で山崩れに巻き込まれ行方知れとなり、お亀久はもう死のうとした。
そんなお亀久に怒った母は、難産でようやく生んだお亀久を取り上げてくれた産婆のタネ様のところへ連れていき、しばらく見習いをしてみろという。
子を産み育てるのがいかに大仕事かをお亀久に教えるためだったが、お亀久は産婆という仕事に興味を持ってしまう。
今でいう引きこもりになってしまうお亀久。
家が裕福なので勉強もさせてもらえていたのだが、見習いとなってからのお亀久はタネと稲に教えられながら、子を産み育てるという女たちを見てだんだんと考えが変わっていく。
女というだけでこんなに不自由なのかと愕然としながらも、自分の生き方を見つけたと感じるお亀久はまだまだ子供だが、周りの大人たちの頼もしさが非常に強い。
そのせいか安心してお亀久の考えも受け止められた。
リンク