百鬼園事件帖


 昭和初期、平凡で誰の記憶にも残らない影の薄さが悩みの大学生・甘木。
カフェなのにコーヒーが不味い店の常連だった。
そこで出会った偏屈で厳しいドイツ語教師の内田榮造先生と親しくなる。
先生は内田百間という作家でもあり、夏目漱石や芥川龍之介とも親交があったようで、そんな先生と行動を共にしていると、だんだん不可解な現象に出会い始める。

 偏屈だけど見捨てない先生と一緒にいるうちに、おかしな気配に気づき始める甘木。
そして話は芥川が描いた先生の絵へと移り、目の中にグルグルとした渦巻きを持つ影と出会ってしまう。
それはドッペルゲンガーだという事になっていくが、それは今まで持っていたドッペルゲンガーのイメージとは全然違うもので、この作品独自の存在だった。
その存在が面白くて意外で、それらが出てきてからは急に話が進み始めて面白かった。
特に先生のドッペルゲンガーは一味違っていて、どんなふうに現れて先生と協力しているのかもっと知りたくなる。