ひとつ目女


2016年05月11日 読了
 失業中のおれ。仕事を探して知人に頼みまくり、やっと手に入れた仕事は「逃げ出したラクダを探してきてほしい」。
ちょっと怖い思いもしながらも割と近くで見つけたラクダ。
それを連れてさっさと帰れればよかったのだが。

 ラクダと共にみつけたひとつ目の女と逃げることになったおれが、えらく遠回りして帰り着く話。

 ラクダはすっかりわきに追いやられ、メインはラクダと一緒にみつけたひとつ目女を連れて逃げる男二人。
ひとつ目女はタイトルになってはいるけどこれも脇のアイテムの一つで。
どうもちぐはぐな印象を受ける。

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私のサイクロプス


2016年05月09日 読了
 迷い癖のある旅本作家・和泉蝋庵と、お供の輪と耳彦。
目的のところにたどり着くまでの迷い道で、ひたすらおかしな町に出くわし、恐ろしいものを見、死にそうな目に合う。

 前作の『エムブリヲ奇譚』の不気味な後味が妙に残っていたので興味がわいた。
ホラーで所々スプラッタだから、読んでいると恐怖で震えるが、なぜか読後感は悪くない。
日本中の奇妙な話を集め、どこかで聞いた頃がある伝承が混ざっているからか。

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骨董通り0番地


2016年05月03日 読了
 骨董通りの一角、あまり人に見つかってほしくないと言わんばかりの佇まいをしたバーがある。そこの常連である老紳士の内山に、ある女性と仕事を含めた付き合いをしてほしいと頼まれる主人公の高柳。

 時が止まったかのような雰囲気のバーと、よく似た気配の老人。
内山に懸想する若い女性に惹かれていく高柳が、自分の嫉妬心に気付いた時、内山を巡る女二人の戦いに巻き込まれていることを知る。
 しかしその戦いすら、内山の練ったゲームの中のひとつにすぎないと気づきながらも抜けられない高柳が、静かに怒りを感じるのが最後の最後までない。
いい年をした男が上手く操られた感があるにもかかわらず。

 人に、「きっとこの作者の本は気にいると思う」と紹介された作家。
煙に巻かれたような読後感だが、不快感はない。

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武装島田倉庫


2016年05月02日 読了
 とある「戦後」。
破壊され、腐敗した街々と、海の水も雨の水も油を含み、奇妙で恐ろしい生物がはびこる世界。
そんなある街の倉庫で働く者たちの、生きてきた時間の一コマを短編で綴る。

 島田倉庫の面々が、どんな経緯でそこにたどり着いたのか。
一人ひとりの出来事が少しづつ。そして島田倉庫での出来事も少しづつ。
「アド・バード」と同じような世界観。
だけどこちらの方が数倍面白かった。

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アド・バード


2016年05月01日 読了
 第11回日本SF大賞受賞作。
いなくなった父を探すため弟とふたり町を出たマサル。
そこでは、今まで見たことがないような生物と、異常に発達した広告がすべてを覆い尽くしていた。

 SFらしい設定で大冒険をするが、世界は気味が悪い生物と危険ばかりで感動や成長といった冒険とはちょっと違う。
奇妙な生物の生態をしっかりと描いていたりして大作だが、世界観になじめず入り込めなかった。

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バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔


2016年04月27日 読了
 平賀とロベルトに、次の依頼がやってきた。
はるか昔、ソロモン王とシェバの女王の子が持ち帰ったという『契約の箱』。その上空に、巨大な炎の剣と天使の姿が浮かび上がったので奇跡認定をしてほしいという依頼だった。
 しかし調査に向かった二人は、これまでにない危機に陥る。

 サバイバル要素がたくさんある回だった。
殺人の容疑をかけられ、砂漠に捨てられ、地下遺跡に閉じ込められ、罠に命を落としかける。
 科学の力で解き明かすというよりトレジャーハンターの要素が多かった。その分スリルはあったが、奇跡調査というには物足りない。

恋細工


2016年04月25日 読了
 百年続く「椋屋」の娘・お凜は、幼いころから父の仕事が好きで、工房に出入りしていた。ところが、急な父の死により跡目争いが起ころうとした時、工房に流れ者の時蔵がやってきた。彼は、父が呼び寄せた天才肌の職人だった。

 愛想がなく誰のいうことにも耳を貸さず、自分のやりたいことだけをやる時蔵に、周りはのきなみ反発するが、作る細工物には目が吸い寄せられる。
そんな時蔵と時代がやがて椋屋を団結させ、変えていく。

 職人を描くのが上手い。いつの間にか引き込まれ、美しく表現される意匠を想像する時間がとても楽しくなる。

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教場


2016年04月20日 読了
 警察学校初任科の第九十八期短期過程の生徒には、厳しい規律と訓練で心を壊す者が出てきていた。
 厳しいだけでいじめとしか受け取れない教官、同期を執拗に追い詰める者など。
そんな中、白髪まじりのある教官は、一人冷静に生徒たちを見つめていた。

 柳広司のスパイシリーズのようなイメージで読み始めた。
途中とても不快な気持ちになるところもあり、そこが全く違うところだが、人の暗い内面を誇張しているという点では効果のある理不尽さだった。

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教場 (小学館文庫) [ 長岡 弘樹 ]
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ピロウボーイとうずくまる女のいる風景


2016年04月19日 読了
 どうしようもない母親から逃げて貧困のさなかにいた絢野クチルは、顔に傷があるキムラに拾われてピロウボーイとなった。いわゆる枕少年。
さらにクチルには、いきなり押しかけてきて住み着いた同級生の知紅がいた。

 キムラからの仕事で出会う女たちを癒す日々。
そして知紅とは体の関係のないままなんとなくくっついて寝ていた。

 石田衣良の『娼年』『逝年』にも似た雰囲気だが、政治の哲学的な思想が混じり、拳銃の非日常も含まれる、ごった煮的なものになった。
知紅との関係には一段落したので、結末としては日常に戻れるいい結果となった。

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ピロウボーイとうずくまる女のいる風景 [ 森 晶麿 ]
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