三年長屋


 下谷、山伏町にある裏店、通称『三年長屋』。そこは河童を祀っており、3年ほどで望みが叶うという噂があった。
元武士だった佐平治は、大家のお梅と出会ったことで、その長屋の差配としてそこに住むことになった。
錺職人や辻占、下駄屋や古手屋などを商う店子たちと、にぎやかな暮らしを送っていた。

 元武士で、上役の不正を質そうとして疎まれたために藩を出てきた佐平治が、店子の悩みや厄介ごとを聞きながら、それぞれの旅立ちを見送る。
お梅が佐平治を差配にした理由は何だろうと考えながら読んでいたが、前半は特に理由も思いつかないほど平凡。
退屈になってきた頃、やっと店子たちの個性も出てきた。
それぞれがきちんと生きていこうとする様子がしっかり描かれているが、長屋が舞台の似たような話は多くあって、その中では特に特徴がなく、印象に残りにくい感じ。

黒蠅 (下)


 「狼男」からの手紙に誘われ、死刑囚監房を訪れるケイ。
マリーノやルーシーもそれぞれ目的を果たそうと準備を進めていた。

 官房では、これまでのケイでは考えられないような愚かなことを言い、挙句に逃走されてしまう。
代わって鋭い勘で危機を回避し、頼もしくなってくるのはニックとなった。
ころころと短い場面の描写が移り変わるので気がそがれてしまう。
そしてずっと疑問に思っていたのは、被害者に関してはきちんと本人確認をするのに、死んでいった犯人に関しては死体の確認さえしていないこと。
ゴールトやロッコは間違えようがないだろうが、爆発させたり沼に落ちたままのキャリーやべヴは本当に死んだのか。
ベントンがあっさり蘇ったせいで信用できなくなってきた。

黒蠅 (上)


 バージニアの検屍局長を辞め、フロリダに移り住んだケイの元へ、死刑囚となった「狼男」から手紙が届く。
悪夢はまだ終わっていなかったことにおびえるケイ。
その頃、女性ばかり何人もが行方不明となっている事件も発生していて、「狼男」の一族との関連に感づいている人物がいた。

 検死局長を辞めたケイは、主人公から脇役へと移っていったかのよう。
さらに、いろんな人物からの視点にころころと移り変わるため目まぐるしい。
「私」という言葉でケイが語ることはなく、「スカーペッタは」と他人のような視点で描かれていて、言動もかつての勇ましさはない。
モリアーティと共に谷に落ちたホームズをよみがえらせたのと同じような手でベントンを出してくるのも不自然。

審問(下)


 ケイの審問の日が近づいてくる。
これまでの事件を洗い直していくうちジェイの身元が怪しくなってきた。
自殺した少年のことが気になるケイは、近くのモーテルで殺された人物がカギを握るのではないかと気づく。
そしてケイの判決は。

 「警告」から続くこの事件がやっと解決する。
ケイが感じたジェイへの違和感が意味を持ってくるまでは、ジェイの正体不明感が仕事柄のせいなのか区別がつかなかった。
検死局長を辞めると決めたケイだが、仕事を辞めて「検視官」としてのストーリーはどうなるのか。

審問(上)


 「狼男」に襲われ、危ういところで助け出されたケイは、精神科医である友人のアナのところへ身を寄せる。
しかし、いけ好かないと思っていたブレイ副所長が殺され、その容疑はケイにかけられた。

 ますます追いつめられるケイ。
不気味なだけでなく、あざとい手で回りを煙に巻く知能をもった「狼男」によって、ケイは一つの決断を下すことになる。
政治的な取引がメインのこの巻では、特にケイもルーシーも役に立たない。
アナの存在感が一番大きかったが、それはアナの家の中だけのこと。
物語が進んでいる雰囲気がない。

警告


 リッチモンドへやってきた船のコンテナの中から、腐乱死体が見つかった。
遺体についていた嬰児の毛のような薄く細い毛。フランス語で残されていた狼男のサイン。密航者だとしてインターポールに問い合わせをするケイ。いけ好かない上司に降格させられたマリーノと共に、ケイはフランスまで呼び出されることになる。

 奇妙な犯人像。これまでの、到底理解できない思考を持った犯人とはまた違った強烈な印象を残す。
マリーノとの言い合いは相変わらずだが、だんだんマリーノの言動が壊れてきているように感じて不安になる。
そのうえルーシーまで不安定になっていて、ケイを含めて誰もが危うい。
言い争いばかり増えている気がする。
この狼男と、新しい年下のボーイフレンドが次のキーパーソンか。

スモッキング刺繍のセーター


使用糸:パピー クイーンアニー(833)
編み図:「今着たいセーター」から
      スモッキング刺繍のセーター 643g

フードつきコート


使用糸:ハマナカ アルパカリリー (112)
編み図:おでかけニット No.5 から 
     フードつきコート 610 g

リケイ文芸同盟


 数学をこよなく愛する根っからの理系である主人公・桐生蒼太。
彼が務めるのは出版社の文芸編集部。理論的なことが全く通用しない「感覚」で仕事をする人たちとの葛藤のお仕事小説。

 全く違う分野に一人入り込むことの難しさは、言葉にしにくい。
感覚も常識も考え方も違うために話がかみ合わないもどかしさは蓄積するから。
 そんな環境を生き抜こうと決めた桐生が、腐れ縁の同期と起こした理系文芸同盟が、ミリオンセラーを出してやると意気込むところはまさに「お仕事小説」。そして、半ばに危機が訪れ、「4章でピンチは一度ではなく、畳みかける」を4章で起こす。最後にタイミングを見計らった驚きのニュース。
小説内で起こす定石をすべて盛り込んであるし、話の中で出てくる小説たちともリンクさせている。
ただ、中身が共感できるかのみ。