第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
ミステリー好きで、小学校の校長だった祖父は、幻視や記憶障害といった症状が現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。
しかし孫の楓が周りで起こった不思議の話を始めると、かつての知性が顔を出し、さらりと解き明かしてしまう。
だから楓は、そんな祖父に会いたくて、今日も祖父の住む家へと向かう。
先生が子供たちの目の前で突然失踪してしまったり、小さな居酒屋で起こった殺人事件や、さらには楓に付きまとう視線の謎など、どれもちょっと不思議で、ちょっと怖い。
楓に問題を出しながら理論的に謎を追う祖父は、老いたとはいえ素晴らしい推理力。
こんな風に優しく語り掛ける謎解きは、あまりなかったように思う。