明智恭介の奔走 屍人荘の殺人シリーズ


 神紅大学ミステリ愛好会会長・明智恭介。
探偵に憧れ、謎を求めてあちこちに出入りしては名刺を配り歩く変人。
サークル内で起こった不可解な盗難、商店街での噂の真相、わずか数分で起こった試験問題の盗難騒ぎなど、身近で出くわす日常の謎に迫る。

 『屍人荘の殺人』より前に葉村と共に挑んだ謎。
変人だが、ミステリを求めるエネルギーは大きい。
屍人荘であんなにあっさり姿を消したのが今でも意外なほどの存在感で、葉村から見たちょっと滑稽な様子がまだ未熟な探偵感が出ていてでおかしい。
それに確かに小さな謎だが、商店街の謎はほっこりさせれたし、シリーズにあるような政治的な陰謀がない分読みやすかった。

乃井探偵社は今日も倫理観ゼロ


 女性専用の探偵事務所である乃井探偵社は、従業員3名ももちろん女性。
ある日やってきた女性の依頼は、「娘を殺した犯人を警察より先に探してほしい」というものだった。
若い女性がさんざん殴られた後に首を絞められて殺された事件は、警察の調べをもってしても容疑者は浮かんでこなかったという。

 ある程度、法を犯す覚悟がないとやっていけないような依頼。
そして従業員の悲惨な過去なども混ざりあい、過去と今を行き来しながら、捜査を進めながらという複雑な構成だった。
それでも登場人物の少なさゆえか混乱はせず、すんなりと読み進められた。