亥子ころころ


 武家出身の菓子職人・治兵衛が、出戻り娘のお永、孫娘のお君と三人で営む「南星屋」。
地方を旅して集めた菓子の覚書を頼りに拵える菓子店は、小さいが繁盛していた。
ある時治兵衛が手を痛め、粉を捏ねるのもままならぬようになった時、まるで呼ばれたようにやってきた行き倒れの男は、菓子職人だったことから、「南星屋」で働くことになった。

 前作は治兵衛の出自が大きな問題となってしまい、やっと皆の心が落ち着いてきた頃に出会った運平。
人の縁を描くのが上手い作者らしい、厳しくも温かい出来事が続く。
今回も出てくる菓子を想像してしばらく手が止まってしまうくらい、魅力的なものばかり。
そして、地元の「塩味饅頭」が出てきので一層うれしくなる。
今後の人間関係にも興味があるが、次はどこの菓子が出てくるかと楽しみになる。

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