使用糸:リッチモアポメラニアン(7)
編み図:オリジナル、250 g
使用針:12号針、10号針
ペットシッターちいさなあしあと
子供の頃事故にあってから、陽太は匂いで生き物の死期がわかるようになった。
それを生かし、妻と動物を愛する柚子川と、不思議な縁でまた出会った動物の声が聞こえるという薫と共に、ペットの看取りをする会社を立ち上げた。
いろんなペットの看取りに立ち会ううちに、陽太は自分の家族にもその匂いがあることに気づく。
周りに自分の特技を披露したばっかりに、有名になり、拉致された経験を持つ陽太が、それでもその力を隠さず強みとしている。
いろんな看取りをするうちに、両親とのかかわり方や、父の言った言葉の意味などを考えてゆく陽太。
そして生と死の両方を自然に受け入れられるようになっていく。
クローゼットファイル 仕立屋探偵 桐ヶ谷京介
服飾ブローカーの桐ヶ谷と、アンティークショップの店長で人気のゲーム実況配信者である小春。
二人は、警察がどうしても見えなかった方向からの視点で事件を見、解決へ導く手伝いをしている。
今回も、杉並警察署の未解決事件の再捜査を行う部署にいる南雲から、いくつかの事件を見せられた。
赤ちゃんの時に捨てられた子供が親を探している。服飾の学校へ通っていた女性が裁ちばさみで殺された事件。女子高生が必死で隠していた怪我など、身につけていた服から見えてくるものを見、推理する二人。
知らない世界のことだから、知らない事がいっぱいでとても興味が沸く。
いちいち調べていくからなかなか進まないが、それでもあっという間に読み終えた。
二人のキャラクターも、掛け合いも楽しいし、何より彼らの言葉はまっすぐ届いてくるので、きつい言葉でさえ清々しい。
メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行 1ウィーン篇 アテナ・クラブ
特異な能力をもつ“モンスター娘”こと〈アテナ・クラブ〉の面々は、メアリの家で一緒に暮らしていた。
ある日、メアリに宛ててヴァン・ヘルシング教授の娘ルシンダから救助を求める手紙が届く。
メアリたちは二手に分かれ、ルシンダを助け出すためにウィーンへ向かう。
メアリたちはそれぞれの特技を生かして暮らしていて、今度もそれを生かせると信じて旅立つ。
心もとない旅費はホームズが助けてくれたが、今回はホームズはほとんど登場しない。
メアリたちの大活躍でルシンダを監視の強い施設から助け出すことができたが、今度は自分たちが誘拐されてしまうというところで終わる。
途中でみんなのコメントが入るのは前回からだが、やっぱりそれが邪魔で気分がそがれてしまうので物語に集中できなかった。
結局どんなふうに進んだのかが残らず、興味も薄れた。
孤宿の人(下)
悪霊を押し付けられた丸海の人々が少しづつためている不満が爆発する。
涸滝の屋敷に幽閉された加賀殿にむけられる刺客や、怖いもの見たさで覗きに行く子供、その度に振り回される役人たち。
毎日の仕事にだけ向かっていたほうにも、大人たちがあたふたするたびに叱られたりしていた。
しかし、ある出来事がきっかけで加賀様から文字を習うことになったほう。
加賀様の教えの通り、数を数え、漢字を覚え、そして誰もが気づかなかった秘策の仕掛けに気づいてしまう。
今度は牢に入れられてしまったりするほう。
だが優しい人たちに助けられ、学ぶ楽しみも知る。
どうやっても厄介者である加賀様の扱いの落としどころをさぐる者と、それを悟る加賀様の最後はとても悲しいものだし、たくさんの人が死んだけど、ほうの力強さが勝ったという事だろう。
タイトルだけでは全くそそらないと思った本だけど、思いのほか面白かった。
孤宿の人(上)
北は瀬戸内海に面し、南は山々に囲まれた讃岐国・丸海藩。
店の女中に手を付け生まれた子供を厄介払いするため、江戸から金比羅代参に連れ出された九歳のほう。
しかし途中で船酔いで寝込んでいる間に付き添いに捨てられ、置き去りにされた。その後藩医を勤める井上家に引き取られるが、そこで優しかった琴江が毒殺されるという事件が起こる。
その後も領内で次々と不穏な事が続き、ほうは立場が弱いために振り回されることになる。
阿呆だから”ほう”と名付けられ、これまでさんざんな扱いを受けていたほうだが、井上家では下働きとして幸せに暮らしていたのに、琴江の死で再び不運に見舞われる。
それでも出会いに恵まれているのか、振り回されながらもちゃんと守ってくれる人に出会えている。
血なまぐさい出来事も多いのに、ほうの生き方を見ているとほっこりしてくる。
これからもひどい仕打ちは多いだろうけど、こんな運に恵まれていくのだろうと思えてくる。
ふわふわのセーター
使用糸:リッチモア ポメラニアン(1)、リッチモア トッピングモール(160)
編み図:オリジナル
使用針:12号針、10号針 250 g
誰が疑問符を付けたか?
誰もが振り返るほどの美人でありながら、「鉄の女」「氷の女」「カミソリ女」という強面なあだ名で呼ばれるほどの冷徹な仕事ぶり。
愛知県警の警部補・京堂景子は、一瞬で相手を凍らせるほどの眼差しと声で事件現場を引き締める。
しかし家に帰るとラブラブな夫の新太郎の作る美味しいごはんに笑顔があふれ、そのギャップは誰も知らない。
今日も手料理を食べながら、新太郎が事件を解くカギを見つけている。
表と裏の顔を持つ景子警部補の、頭脳は実は新太郎で、ちょっと話を聞いただけでヒントをつかんでしまう新太郎。
その変わり身のギャップが面白いが、事件は本当にあっという間に解決してしまうのでちょっと物足りなく感じる。
でも無理やり感はないので納得できる推理。
春告げ坂―小石川診療記―
長い坂を登り切った先に位置する小石川養生所。貧しいものが集まるこの診療所で、医師の高橋淳之祐は毎日忙しくしていた。
手習い所で文字を教えていた女性や、金が返せず奉公先の店からくすねていた男、いろんなものを背負った者たちが日々やってきては、治療を受けている。
そんな中、大家に連れられやってきた男は、肝臓を患っていて、動くのも辛そうだった。
そしてその男は、淳之祐の過去とも因縁のある相手だった。
療養所内での問題も多い中、身寄りのないものを引き受け、治療する。
医者の淳之祐が日々力不足を悔やむ様子が良く描かれている。
そんな中で患者としてやってきた男が自分の家族とかかわりがあるなんて思いもよらなかった淳之祐が、戸惑いながらも医者として成長しようと決心するまでになり、また希望が湧いてくる結末ですっきりと読み終えることができた。
さらに、ふと聞こえる笑い声や、毎年ちゃんと咲いてくれる桜など、ちょっとしたことで気持ちが和らぐ様子がところどころあって、気持ちが暗くならずに済んだ。
無明 警視庁強行犯係・樋口顕
荒川の河川敷で見つかった高校生の水死体。
所轄は自殺と決定した事件だが、記者の遠藤から聞かされた疑問がひっかかった樋口は、再捜査を進言する。
いったん自殺で決着した事件を掘り返すのは、所轄のメンツをつぶし、他所の縄張りを荒らすことになる。
それでも樋口は、犯人を見逃してしまうことの方が重大だと、別動隊として探り始めた。
きっかけが小さなことでも、気になったことは解決させる。
なぜか評価が高い樋口のやり方でいつも事件は解決し、周りは改心するが、安積班のようなチームでの活躍でもなく、今回は部下もほぼ登場しないため、どことなく独りよがりな感じがしてくる。
樋口の人徳の所以がいまいち納得できないため、共感もしにくかった。