バチカン奇跡調査官 王の中の王


 オランダ・ユトレヒトの小さな教会からバチカンに、「礼拝堂に主が降り立って黄金の足跡を残し、聖体祭の夜には輝く光の球が現れ、司祭に町の未来を告げた」という奇跡の連絡が入る。
ロベルトと平賀は、42人もの目撃者すべてに話を聞き、主の足跡の調査を始めた。
小さな教会にのこされた聖遺物。そしてそれが収められていたステンドグラスのケースまで。
そこで二人が見つけたものは、大昔の隠し部屋と隠し通路、そして聖遺物が持ち込まれた時代の宝だった。

 一つの奇跡のはずが、当時の先端技術や流行にまで広がり、教会の存在した年月の長さを感じさせる。
追及自体は興味深いし、盗賊は天の罰を受けたような形で見つかって、奇跡調査は終了する。
それでもなんだか消化不良な感覚が残るのは、解明された現象がどんな風なのか、想像ができないからだろうか。

リーフ模様の丸ヨークセーター


使用糸:ハマナカ ソノモノロービング (95)
編み図:天然素材で編む 大人のナチュラルニット より
    リーフ模様の丸ヨークセーター 466 g 12号針

〈銀の鰊亭〉の御挨拶


 高級料亭旅館〈銀の鰊亭〉は、1年前に火事で離れが全焼し、当主夫妻が亡くなり、助けに向かった娘の文は怪我を負った上に記憶を失う。
そこへ、大学入学を機会に一緒に住むことにした文の甥の光が加わった。
ある日刑事だという磯貝が光に声をかけ、あの火事は事故として処理されたが、実は当主夫妻と共に身元不明の男女の死体も発見されていたと教えてくれる。
光は礒貝と共に、真相を追い始めた。

 火事での身元不明の男女の件はなかったことにされており、すでに捜査は終了しているため大きく動けない礒貝を助けるために、光はいろいろと考えるが、突然の文の「記憶をなくしてから身についた不思議な力」が出てきたとたんに急に陳腐になった。
そしていくつかの事実を見つけたにもかかわらず、結末はなんとも肩透かし。
文のおかしな力もそこまで活躍はせず、いったい何のためだったのか。

オフマイク(スクープシリーズ)


 継続捜査を担当する捜査一課特命捜査係の黒田と矢口。
黒田の同期・多岐川から二十年前の大学生自殺について、不審な点があるが確証がないため、こっそり調べてほしいと依頼される。二人が聞き込みを進めていると、「ニュースイレブン」の報道記者・布施もこの事件に目を付けていると知る。
交友範囲の広い布施と情報交換を始めた黒田たちは、IT業界で注目の藤巻という男に注目した。

 ニュース番組のメンバーと継続捜査の刑事たちの、奇妙な協力捜査。
交互に語られるそれぞれの捜査が、やがて20年間隠されてきた事件の真相を突き止める。
でも、事件を追う人物が多すぎて一人一人の印象が薄い。
布施の飄々とした雰囲気にのまれる感じで、みんながいいなりになっていくよう。
もっと個性のある人たちが欲しい。

わが殿 下


 藩の負債をなくすため、幕府から大きな借金をして銅脈を掘り当てたり、食う分だけの金しか使わない政策で3年をすごしたり、大野藩は借金という敵と戦うために様々なことをしてきた。
やがて完済のめどが立ち、一安心できるかと思いきや、夢を語る若者はお構いなしに使いまくる。
しかし、そんな者たちへ頼もしいやり繰りを続けていた七郎右衛門に、見方する者だけではなかった。

 藩の金巡りを良くしようと店を出して商人とやりあってみたり、荷を運ぶ船を借金して買ってみたりと、相変わらず大きなことを大きな苦労をしながらやる七郎右衛門。
しかし、そんな話もずっと続くと飽きてくる。
そして急に藩の中からの不満を持った奴らから狙われ始めるのは、今までなかったことがおかしなくらい。
面白いキャラクターはたくさんいたけど、その割に単調だった。

わが殿 上


 幕末、ほとんどの藩がそうであるように、大野藩も財政難に喘いでいた。
若き藩主・土井利忠は、誰もが良い案を出せずにいる中で、一人の若者に白羽の矢を立てた。
若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休であった。
七郎右衛門は、誰もが知恵を絞っても出せなかった案で金を作り出し、若殿のいくつもの指令をこなす。

 珍しく妖怪が出てこない話。
そして主人公の性格も、とぼけた様子は割に少ない。
しかし、事が起こって途方に暮れる場面からいきなり数年が過ぎていたりと、場面の切り替わりが急すぎることも多くて気持ちの切り替えがしにくい。
それでも、次々出てくる金勘定のやりくりをなんとかこなす七郎右衛門のやり方は思いのほか堅実で、奇をてらったり偶然に頼ったりしていない。
そのため胸のすくようなどんでん返しはないが、藩の力をじっくりと積み上げていく様子が頼もしく映る。

くさり模様の帽子


使用糸:毛糸ZAKKAストアーズ ごきげんWool (07),ALPS 純毛中細[ウォッシャブル](1)
編み図:トリッキー・ニッティング より
    くさり模様の帽子 100 g  6号針

二重拘束のアリア: 賞金稼ぎスリーサム!


 国際指名手配のテロリストを追い詰めたことで多額の報奨金を手に入れた3人は、日本初の刑事事件専門調査会社「チーム・トラッカー」を立ち上げた。
そして初日に訪れた依頼人は、ある事件の遺族だった。
夫婦で殺しあったというその事件は、心中とは違い、お互い殺意を持っていたと思われる。
聞き込みを始めた3人は、異様なその雰囲気に飲み込まれそうになる。

 仲の良い夫婦だったはずの二人が、お互いが死ぬまで傷つけあったという事実が、不気味さを広げる。
調査の前半はまさに骨折り損のようで疲労感も漂うが、そのうち全く思いもよらない事実が浮かび上がり、うすら寒い気持ち悪さでいっぱいになり、それでもどうにかしたくて目が離せなくなる。
そんな流れが、読みやすいテンポでさらさらと続く。
犯罪者をただただ捕まえたり死なせて解決するより現実的な終わりなのも頼もしさを感じさせ、3人の濃いすぎるキャラも前作より違和感なく受け入れられた。

標的(下)


 ケイやルーシーが考えるよりも上をいく犯罪者。
連続殺人事件のつながりを見つけていくうち、権力者とその息子にたどり着き、やっと悪事を告発できると思ったその時、素晴らしいタイミングでその権力者の死亡のニュースが流れた。
偶然ではありえないと急いで証拠を集めに出かけるケイとベントン。
そこで、衝撃的な事実を知ることになる。

 すでに死んだはずの人のツイッターアカウントからケイに届いたメッセージ。盗まれた車、書き換えられたルーシーのDNAデータ。
ルーシーの立てた予想は、ルーシーを怖がらせ、その様子にケイは傷ついていく。
そしてやっぱり、死んだと思ったのに遺体を確認しないでいた犯罪者が登場する。
「やっぱり」感ががっかりさせられる。
狙撃の腕も天才的な犯罪者がなぜケイにだけ失敗するのか。都合がよすぎる。