標的(上)


 気持ちのいい朝、ベントンとの休暇旅行へと出かける日、ケイは裏庭の塀の上に並べられた1セント硬貨を見つける。
そして少し前に届いていた不審なツイート。かすかな違和感と共に休暇は返上となり、さらに自宅近くで銃撃事件が起こっていた。

 もっとも起こってほしくないタイミングで起こり、呼び出されたケイが関わることになったのは、時間をかけて練られた計画への参加だった。
うすら寒い犯人の行動は今までもたくさんあって、神経質ともいえるほど用心していたにもかかわらず、不気味な攻撃を受けてしまう様子は、自宅にいても気が休まることがない。
今度も関連と思われる銃撃事件がいくつか出てきたせいで恐怖が増す。
でも前回うんざりしたベントンのボヤキは減っているのでほっとした。

縦縞模様の帽子



使用糸:毛糸ZAKKAストアーズ Foire (26),ハマナカ アメリー (15),リッチモア パーセント (35)
編み図:まっすぐに編むニット から
    縦縞模様の帽子 茶&青 47 g,茶&緑 49 g 8号針

儀式(下)


 投資運用会社ダブルSとの訴訟の途中で殺された大学院生は、ルーシーとは知り合いだった。さらにベントンは捜査方針の違いでFBIから孤立気味。
遺体からは3色に輝く微物が発見されており、過去の事件との関連も見いだされてきて、事件は混沌としてくる。

 今回はベントンが窮地に置かれるが、これまで泰然としていたベントンが卑屈でひがみっぽい言動を繰り返す。
冷静でいようとしているが、印象がどんどん悪くなっていくのは悲しかった。
そして、わりと始めの頃に手がかりとして注目させた3色の微物が解決へのヒントになるかと思っていたが、まったく使われず、解決後に犯人の持ち物から発見されるだけという結果に。何のためにあれだけ注目させたのか。

儀式(上)


 ケイがインフルエンザで寝込んでいた頃、マサチューセッツ工科大で女子大学院生の変死体が発見される。
マリーノと共に出かけたケイは、遺体に不思議な光る微粉末を発見する。そこへルーシーのヘリでベントンまでやってきて、「ワシントンDC連続殺人事件と同一犯ではないか」と言う。

 これまで通り、前半は事件や遺体の発見までにやたらと長い説明が入る。
ケイの身辺に不審な人物がうろつくのもこれまで通り。やや飽きた。
どんな性質の事件なのかが分かるまでが長すぎるし、会話のやり取りにすれ違いが多いのも不自然で不愉快になる。
質問に答えないで自分の言いたいことだけを言う人物が多すぎる。

くさり模様の帽子



使用糸:パピー クイーンアニー (987)(833),パピー シェットランド (43)
編み図:トリッキー・ニッティング から
    くさり模様の帽子 グレー&青:116 g
             青&オレンジ:98 g  7,8号針

模様編みでスモッキング風なセーター



使用糸:パピー シェットランド (43)
編み図:今着たいセーター から
    模様編みでスモッキング風なセーター 518 g 8号針

少女の時間


 元刑事で現在フリーのジャーナリスト。そんな柚木に月刊EYES編集部経由で持ち込まれた、2年前の未解決殺人事件の再調査だったが、調べ始めた途端、関係者が死亡するという事態になる。
情報をくれる美人刑事に、調査対象の美人親子、柚木の周りに集まる癖の強い美女たちが、柚木の苦悩を増やして回る。

 シリーズだがとりあえず一つという程度で手に取ったが、意外に面白かった。
洗濯好きの女たらしという設定の柚木が、女たちに困らせられながらもさらりと口説く様が楽しい。
女たらしというより、やたらと女に絡まれる感じの人たらしで、それでも料理がうまく、もてなしもスマートなので、これでは嫌いながらも寄ってくる女たちの気持ちも少しわかる気がした。
推理も警察とうまく役割を分担しながらきっちりと詰めていくので流れがつかみやすく、事件としても興味が持てるため最後まで手が止まらない。

あなたのためなら 藍千堂菓子噺


 おっとり者の菓子職人の兄・晴太郎と、少々口は悪いが算盤や商いの上手い弟・幸次郎は、無口だが笑い上戸の職人・茂市と3人で「藍千堂」を営んでいる。
晴太郎が結婚して、男所帯が明るくなったところに、従妹のお糸の縁談話が舞い込んだ。
いつもはボンクラばかりを連れてくる叔父が今度はまともな男を選んできたと、皆は興味を惹かれたが、この縁談がとんでもない厄災を連れてきた。

 兄弟の言い合いが微笑ましい。
しかし今度も、簡単には癒えることがない傷を負うものが出てくる。
優しさにあふれたシリーズで、温かく優しい気持ちでいられ、お互いを思いあう場面が多い。
考えぬいてできる菓子も美味しそうで、華やかさを増す。
じっくりと読みたいシリーズ。

漣のゆくえ とむらい屋颯太


 事故でも自殺でも、人が死ぬと魂はいなくなり、直ちに腐り始める。
しかし生きている人にとっては、その抜け殻は大事な人の姿であり、すぐには受け入れられない。
そんな人々にとって、弔いはとても大事なものとなる。
「弔い屋」の主人・楓太は、そんな遺族の気持ちを救いとる。
 今回も、訳ありの死人を運んでほしいと依頼が入る。

 楓太自身も辛い過去を持ち、生き残った者として、残された人たちの気持ちに区切りをつけられるよう、細かい心配りをする。
新しい仲間も増えてにぎやかになるが、やや感傷が押しつけがましいと感じる部分もあった。
それでも暗い雰囲気にはならず、生きている人を一番に考える様子は力強い。

猫君


 江戸・吉原で髪結いをするお香に育てられていた猫・みかんは、やがて20年がたつという頃、病を得たお香に一つの約束を言い出される。
それは、近く自分は死ぬから、飼い主を取り殺したと言われて捕まえられる前に、逃げなさいという。
悲しみに暮れる暇もなく逃げ出したみかんを待っていたのは、猫又としての生き方を学ぶ猫宿と、先輩猫又たち。
しかし今年の新米猫又たちは、いつもと違う学びとなってしまった。

 登場人物が猫であることを忘れぬよう、話すセリフに時々「にゃあ」が加わることに慣れてしまえば、これまでの作品と同じように楽しめる。
つまり、何か問題が起き、仲間と共に、知恵を絞って切り抜ける。
いろんな個性が楽しい知恵を生み、それが猫たちだと思うと、集まっている様子を想像するのもまた楽しい。