オネスティ


2019年02月20日 読了
 風が吹き抜ける丘の上に立つ双子のような2件の家。
そこに住んでいた二つの家族には、同い年の子供がいた。
彼と彼女は、二つの家の間に立つケヤキの木の下で、生涯の約束をした。

 互いに大好きだけど、恋愛はしない、結婚も、触ることもしないと言った約束を貫く二人。
純愛のように思わせるが、二人だけの世界を作り、周りを振り回している。
特にエピローグはおかしい。あれは単に続きで、エピローグというならもっと時間を区切って視点を変えてほしい。
途中で飽きたかのよう。

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雨上がり月霞む夜


2019年02月15日 読了
 紙問屋・嶋屋を営んでいた秋成は、火事で家を失う。
家業を失った秋成は、幼なじみの雨月が結ぶ庵のもとに居候して医者を目指すことにしたのだが、その庵の主の雨月は極度の人見知りで、秋成の他には会おうとしない。しかしそんな雨月のところに、ウサギの妖がやってきた。

 雨月と秋成は、子兎に姿を変えた妖の「遊戯」といることで、不思議に出会う。
それらはただ悲しい終わりしか招かなかったり、また救ったりもするが、どれも総じて暖かい終わりとなる。
『雨月物語』を知らなかった。手に取ってみたくなった。

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漂砂のうたう


2019年02月11日 読了
 第144回(平成22年度下半期) 直木賞受賞
明治に入り、武士の地位は消えてなくなる。そんな武士の出を隠し、根津遊郭で働いている定九郎は、馬の合わない上司の下でいつまでも昇格しないまま、鬱々としていた。
そんな時、うっかり登楼させ酔うと声をかけた人物は渡世人で、職を張っている花魁を引き抜こうとしている奴だった。

 常に身を低くして生きる者が、突然我に返ったように動き出す時は、得てして失敗に終わる。その結果、一人の花魁を死に追いやったとして定九郎はますます内にこもるようになる。
そんな主人公が起こす大事は、貯めていたエネルギーをすべて吐き出すかのように周囲に大きな波紋を広げるが、終始どこか水の底から眺めるような閉塞感が付きまとっていて暗い。
エネルギーを発しているのはたった一人の花魁だけで、重苦しい雰囲気のシーンばかり。
それでも充分読みごたえがある本だった。

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ドアを開けたら


2019年02月07日 読了
 横須賀のマンションに住む独身の鶴川佑作。
仲良くしている同じマンションの住人の雑誌を返そうと家を訪ねると、返事もなく、鍵も開いていた。
心配して中を覗くと、死体があった。

 マンションの住人同士の関係が様々で面白い。
好感を持っていた人が、他人にとっては気味の悪い人だったりすると知って怖くもなるが、すべては最後にスッキリ解決するので後味は悪くない。
書店シリーズは都合のいい出来事ばかりで飽きていたが、こちらは楽しかった。

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お師匠さま、整いました!


2019年02月01日 読了
 年の離れた夫を亡くし、学者だった夫の代わりに寺子屋で師匠をしているお桃。
学問も算術も、それほど好きではないお桃だが、子供に教える程度なら大丈夫であった。しかしそこへ、酒匂川の氾濫で両親を亡くした春が寺子屋を訪ねてきた。
 自分にはない発想をする春と、算術が好きで才もある生意気な鈴と接しているうちにお桃は気持ちが乱れていく。

 第11回小説現代長編新人賞受賞作。
しかし、なんだかお桃のキャラクターが一貫しない気がしてずっと違和感があった。
主人公の気質がはっきりしないのは、混乱もするし感情移入もできない。
算術の面白さは伝わるが、桃の人となりは伝わってこなかった。
それ以外の、夫や平助、春や鈴はとてもスッキリ伝わってくるのに、なぜだろう。

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青炎の剣士 (紐結びの魔道師3)


2019年01月31日 読了
 相変わらずの執念で襲い来る化け物と闘いながら、一方では元コンスル帝国軍人ライディネスの襲撃にも備え、やることがいっぱいのエンス達。
古の巫女の結び目もまだ解けない。

 自分に悪意を持つものではないのになぜ執拗に追って来るのか。
恨みを買わなくても悪意はむけられる。ただ本人が目を付けただけで。
緊迫する戦いの中でも、時々ふっとトゥーラに向ける思いが溢れて和む。
定石の結末となったが、もっと彼らを見てみたいと思う。
特に、別の視点からのライディネス。
そしてダンダンに乗ってみたい。

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青炎の剣士 紐結びの魔道師3 [ 乾石 智子 ]
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髪結百花


2019年01月25日 読了
 遊女たちの髪を結う仕事をしている母について、髪結いの見習いをしている梅。
当代一の美しさと言われる紀ノ川や、その禿になったタネとの出会いが、お梅の心に覚悟を抱かせる。
 
 遊女と恋仲になった夫から婚家を追い出されたお梅には、辛い仕事。
でも女たちとの交流の中で、次第に仕事への矜持を見つけるお梅の様子が力強く描かれている。
そして悲しい出来事をいくつも乗り越える女たちの様子に何度も泣かされる。
美しさの表現も見事で、想像するだけでも息をのむほどの光景が何度も出てきて、そのたびに繰り返し文字を追った。
最後まで満たされた思いが続く。

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対岸の家事


2019年01月23日 読了
 家族のために、家事をすること。
それがこんなにも大変だなんて、誰も言ってくれない。
家事と、育児と、仕事と。

 苦しくて死んでしまおうと思うほど追い詰められる人たちが、どんな思いでいるのかをじっくり書いてあるので、読んでいて苦しくなる。
それは女だけの話ではなく、育児休暇を取った男性でも同じ。
これは、家事を”手伝っている”と言っている人たちに是非読んでほしい。
切実すぎてうなされそう。

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対岸の家事 [ 朱野 帰子 ]
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百貨の魔法


2019年01月19日 読了
50年前に建ったこの百貨店は、エレベーターが手動だったり、屋上にはメリーゴーランドや観覧車もある。
そして「魔法を使う白い子猫」の伝説。

 古くても街の人々に愛されている百貨店を舞台に、そこで働く人と客たちのほのぼのとした物語。
どれもが優しく穏やかで、ファンタジーでメルヘンな世界が広がる。
ふわふわした感覚でずっといられる、夢をみたような気分。

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百貨の魔法 (一般書 981) [ 村山 早紀 ]
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バチカン奇跡調査官 天使と堕天使の交差点


2019年01月14日 読了
 呪いの宝石に悩んでいるという宝石商が、偽の神父に騙されそうになっていた。
ちょうど行きあったロベルトは、平賀を誘い、呪いを解くエクソシストをしてほしと頼まれる。

 呪いの真実は、想像もつかないことだった。
特殊な目を持つ人がいることは知っていたけど、短編だけどインパクトが残った作品。
他の短編も、うすら寒食て気味が悪いものや、微笑ましいものまで、さらりと読めて楽しかった。