家業の縫箔屋の跡を継ぐ決意が出ないまま、それでも絵を描くことが大好きな主人公の菱川吉兵衛。
本意を告げずに江戸へ出てきた吉兵衛は、絵師にもなれないまま10年の時を自堕落に過ごしていた。
ある時、吉原の娘の小袖に刺繍をして見せたところ評判となり、吉兵衛は苦界でも懸命に明るく生きようとする女たちに、自分のふがいなさを思い、奮い立つ。
やっぱり絵が書きたい。
目指した絵師からは程遠い生き方をしていることに腐っていた吉兵衛は、いろんな流派の絵を見てきたことで誰にもない個性を身につけていたことに気づく。
そして絵師として名を残したいと踏ん張るうち、自分流の絵を描くことに目覚め、やがて人気が出ていく。
しかし浮世絵師としての吉兵衛は、やがて嫌っていた狩野派と同じようなことを始めてしまう。
吉兵衛の人生は女たちによって芽吹き、諭されていく様子が吉兵衛の焦りと共に描かれていて面白い。
どこかで彼の弟子側の視点で書かれた本を読んだ気がする。
リンク