広重ぶるう


 定火消同心の子として長屋で生まれた重右衛門は、幼いころから絵が好きだった。
町絵師なら簡単になれると思い人気の豊国に師事しようと訪れたが門前払いされ、銭を稼げるならだれでもいいと、次に豊弘の門をたたいた。
しかし、広重という名をもらい、独り立ちしても一向に売れず、美人画は「色気がない」、役者絵は「似ていない」と酷評されるしまつ。
貧乏暮らしの中、ある日なじみの版元である喜三郎から見せられたうちわ絵に衝撃を受ける。
それは、まだこの国ではで広まっていない、ベルリンから来た顔料「ベロ藍」だった。
広重は、この青でしか描けない江戸を書きたいと、生涯思い続ける。

 これはじっくり読みたいと思っていたのに、気づけば止められなくなっていた。
そういえば北斎の話も、娘のお栄の話も、国貞の話も読んだことがある。
江戸の絵師、浮世絵師の話は多く、そのどれもがエネルギーにあふれていて面白い。
苦悩し、腐ったりもしたけど誰からも見捨てられないのは広重の人徳。
ベロ藍で刷られた空や川の色を実際に見てみたい。

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