李の花は散っても


 後の昭和天皇の最有力妃候補だった梨本宮方子。
しかし、避暑に訪れていた別邸で何気なく見た新聞で、自分の結婚が決まったことを知り、ショックを受ける。
相手は朝鮮王室の李王世子・李垠だった。
政略結婚だったが、方子は死ぬまで夫に寄り添い、日本と朝鮮の戦争を挟んだ厳しい時代を生きた。
一方、朝鮮の革命家に恋をしたマサは、何があろうと彼と一緒にいようと決め、朝鮮へ渡り、朝鮮人と偽って生き抜く決心をする。

 二人の女性の、大きく人生を揺さぶられた混沌の時代の生き方。
前半は、方子が特別な立場だったせいもあり、マサの側は退屈だったが、佳境に入ってくるとやっと勢いが出て面白くなった。
これだけ対局でも、国にいいように扱われ、戦争で死にそうになり、信じた人たちとまた会えることを祈って過ごすという面では同じことをした二人。
二人の優しい出会いがじんわりと沁みる。

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