林檎の木の道


 17歳の夏休み、屋上に母が作ったバナナの茂る庭に埋もれた小さな池を掘り返していた広田悦至は、元彼女の由実果が、千葉の海で自殺したことを知る。
しかし、由実果は自殺するような人間じゃなかったという思いがどうにも気になり、葬式で出会った幼馴染の涼子と共に調べ始める。すると、今まで知らなかった由実果の姿が次々と現れ、謎を深めていった。

 夏休みという自由な時間と、暑さの中でうんざりしながら物思いにふける若者のけだるさが充分に感じられる、半ばぼんやりとした時間。そんな雰囲気のなかでゆるゆると時間が進み、愚痴っぽいシーンが多くて気が滅入ってくる。
多少推理の部分もあるが、ぼんやりしすぎて興味がなくなっていき、驚くようなこともなく、まぁそんなとこだろうと思う程度の結末。

猫をおくる


 いつの間にか猫が集まり、「猫寺」と呼ばれていた都内の木蓮寺。
そこには、猫を専用に扱う霊園がある。
高校教師だった藤井は、住職の真道に誘われて猫専門のスタッフとして家族として過ごした猫たちの供養をしている。
炉の温度や時間を工夫し、骨がきれいに残るように。そして小さな星を見つけられるように。
 猫と過ごした時間、猫に救われたり、癒されたり、共に生きたものをいたわる人たち。

 小さな骨の中になってしまった猫たち。
猫に選ばれた人間たちが集まり、ただ優しい時間を過ごす。
これまでの辛い出来事を隠して、死んでしまった猫を思い、今生きている猫たちとの時を描いた優しい物語。
童話のよう。