孤宿の人(上)


 北は瀬戸内海に面し、南は山々に囲まれた讃岐国・丸海藩。
店の女中に手を付け生まれた子供を厄介払いするため、江戸から金比羅代参に連れ出された九歳のほう。
しかし途中で船酔いで寝込んでいる間に付き添いに捨てられ、置き去りにされた。その後藩医を勤める井上家に引き取られるが、そこで優しかった琴江が毒殺されるという事件が起こる。
その後も領内で次々と不穏な事が続き、ほうは立場が弱いために振り回されることになる。

 阿呆だから”ほう”と名付けられ、これまでさんざんな扱いを受けていたほうだが、井上家では下働きとして幸せに暮らしていたのに、琴江の死で再び不運に見舞われる。
それでも出会いに恵まれているのか、振り回されながらもちゃんと守ってくれる人に出会えている。
血なまぐさい出来事も多いのに、ほうの生き方を見ているとほっこりしてくる。
これからもひどい仕打ちは多いだろうけど、こんな運に恵まれていくのだろうと思えてくる。