鉄砲同心の跡継ぎである丈一郎は、射撃の訓練はしているが、副業のつつじ栽培の方が気に入っていた。
泰平の世になって長く、武士も本業だけでは食べていけなくなった幕末、頑なにつつじの世話をやろうとしない父との口論も日課となってしまう。
一家六人を養うには仕方がないのだが、交配で作り出す代わり品種を楽しみにしている丈一郎のところに、父の昔馴染みが訪ねて来る。
にぎやかな一家の様子がとても微笑ましい。
鉄砲の火薬が使いようによっては肥料にもなり、物は使い道でずいぶん違うということを考えさせられる。
頑固だけど子供のような父が可愛く見える部分も多く、どんなことも発散して溜め込まないのでどんよりしない。
家族それぞれの個性もきっちり描かれているので想像もしやすく、楽しい団らんだった。
子供には見せない夫婦の約束の話でほっこりするのは、もう私がそちら側の年に近いからか。
リンク