アイコード使いのショール


使用糸:リッチモア ヘルシンキ(8)
編み図:まきものいろいろ より
     アイコード使いのショール 280g
使用針:12号 輪針

手袋の中の手


 探偵ドル・ボナーは、共同経営者シルヴィアの後見人であるP・L・ストーズから、妻に取り入り、金を巻き上げてる宗教家を妻から放したいと依頼を受ける。
しかし、動き始めた直後、依頼人のストーズが死体で発見される。
自殺か殺人か、若き探偵ドルは、警察と時に協力し、時にからかわれながら、事件解決のために奔走する。

 話がくどい登場人物が多く、うんざりしながら読んでいたせいか全く話に入り込めず。
結局最後までよくわからないまま。
主人公の魅力も感じられないし、印象に残ったのはむしろ共同経営者のシルヴィア。

11月そして12月


 高校も大学も中退し、今はカメラを持って虫を撮り歩いているフリーターの柿郎。
ある日公園で出会った女性に恋をした。
しかし、彼女と親密になる前に家族に巻き起こった不穏要素が、暇なはずの柿郎を忙しくする。
父の不倫に姉の自殺未遂、挙句には「彼女には関わるな」と言いに来る男性まで。
冬のひと時、柿郎に起こった大騒動。

 柿郎の口調が淡々としてどこか長閑なせいで、緊急事態もするりとやり過ごせそうな気がする。
出会った女の子が気になって調べたり家に押しかけたりというのはちょっとやりすぎだが、柿郎なら不思議はないような気になってしまったり、父の身勝手な理論も受け入れて協力させられたり、母にも使い走りをさせられて、それでもそれが自分のやりたいことだったという雰囲気を出す。
やっかいな男だが憎まれはしなさそう。

捜査一課OB-ぼくの愛したオクトパス


 初老の巡査長・鉄太郎と、若手キャリアの警部・賢人。
二人が今手掛けているのは風俗嬢ばかり狙った通り魔強盗事件。
頑固な鉄太郎に冷や冷やしながらも、捕まえた容疑者に賢人は違和感を覚える。
そんな時、母が浜辺で捕まえた傷ついたタコを飼い始め、ソクラテスと名付けたそのタコに触れられると不思議な予感を得られることに気づく。
頭の良いタコに導かれる賢人。

 赤川次郎のような読みやすさと、大倉崇裕のようなタイトルで、どちらも二番煎じ感たっぷり。
特に個性的な部分があるわけでもなく、すぐに埋もれてしまうような話なうえ、プロローグ的な周囲の説明が長くてうんざり。
視点がそれぞれの登場人物に何度も切り替わるため、いろんな角度から見られるがちょっとうるさい。
賢人の母の久子が癒しとなる。

リーフ模様のショール


使用糸:ハマナカ モヘア <カラフル> (30)
編み図:おでかけニット vol.1 より
     リーフ模様のショール 180 g 7号針

レンタルフレンド


 友人や恋人、ママ友や人数合わせ、何でも来い。
大手の商社を辞めて始めた仕事はレンタルフレンドで、七実はあらゆる人物になりきる。
デザートブッフェへ一緒に行ってほしい、月に一度一緒に映画を見に行って感想を話し合う、婚約者の友人たちの集まりに一緒に行ってほしい。
依頼のなかで、七実は依頼者の人となりを観察していく。

 依頼してくる人にはいろんな理由があって、それでも依頼者に嫌な思いをさせないように精いっぱいのことをする。
人見知りせず、物怖じしない七実の様子は頼もしいがハラハラする場面もある。
同業者と出くわすこともあるし、設定がばれそうになることもあって、何とか乗り切ってはいるがちょっと都合が良い進み方。
それでも最後は前向きなシーンで終わるのでほっとした。

風景を見る犬


 那覇市大道の栄町にある売春宿の息子・香太郎。
「アミーゴ」でバイトをして、平和な夏休みになるはずだったのに、近所で2件の殺人事件が起きてしまう。
狭いご近所さんでそんな偶然はおかしい。
 自由で頼もしい近所の有力者の母、いつの間にか疎遠になっていた隣の幼馴染、女好きで悠々自適な近所のゲストハウス「アミーゴ」のマスター、そしてふらりとやってくる本土からの素性のわからない旅行客。
香太郎はいつの間にか、母や居候と共に事件を探る役割を担う。

 被害者の過去が分かってくるととたんに複雑になる事件。
捜査に顔を突っ込んで不思議と情報を集めてくる母達に振り回されているようで、香太郎はしっかり周りを見渡している。
そして皆は、沖縄のゆるりとした曖昧な雰囲気の中で何年も前の重い秘密を探り出してしまうが、当事者がすべていなくなり、彼らの気持ちを注がれた「今生きている者」を守るために考える。
 むやみに犯罪を暴くことをしない。

書店員と二つの罪


 書店員の椎野正和は、ある日届いた新刊の中に、17年前の少年犯罪の犯人が書いた告白本を見つける。
それは正和が中学の頃、女生徒が殺され、バラバラにされた事件。
犯人は正和の隣家の同級生だった。
それ以来、マスコミや世間から受けた扱いでひどく傷つき、正和は地元から逃げて一人暮らしをしていたのだ。
その本を売るのか、正義はどこにあるのか、モラルとしてどうか。
葛藤の挙句、読むことを決めた正和だが、そこにある違和感を抱く。

 過去のある犯罪を思い起こさせる。
一貫して否定してきた正和だが、内容から気づいた違和感の結果に自信の信条が揺らぐ。
ミステリーとしては楽しめたが、現実の事件を思い起こさせるために嫌悪感も同時に起こる。

猿の悲しみ


 弁護士事務所で”事務員”として働く風町サエ。
ちょっと正当じゃない手段も使って依頼主のために情報を集めてくるのが裏の仕事。
モデルとの離婚のためプロ野球選手に請求された1億もの慰謝料を減額するためモデルの過去を洗っていたら、ついでに頼まれていたマンションで女が殺された事件も妙に気になる。
そしてサエがつかんだのは、34年も前の出来事。

 二つの事件が交互にやってきて混乱する。
でもサエの言動がさっぱりしているので重苦しくならず、凜花という面白い人物も出てきてやり取りに目が離せない。
事件もうまい落としどころを見つけられるが、このシリーズはどうも男たちに分が悪いようだ。
凜花の含み笑いが怖くて美しい。
もう一度「笑う少年」を読み返したい。

笑う少年


 名目は弁護士事務所の調査員として、本当はいろんな手段で「調査」をしているシングルマザーのサエ。
芸能界を牛耳る小田崎貢司から、自身がプロデュースしたアイドルが自殺し、その両親から莫大な慰謝料を請求されているが、減額できないかと依頼が入る。
若い女の子だけで安売りピザの売り子をさせ、人気投票をしてトップをアイドルとして売り出している小田崎に、サエは気味の悪さを感じていた。
そしてまた別の方面から、今度は小田崎貢司の弱点を調べるよう依頼が入り、サエは経歴がほとんどわからないという小田崎貢司の身辺を調べ始める。

 サエの威勢のよさが気持ちいい。
かつて不良で、仲間とのいざこざで人を殺してしまい、しばらく服役していたというサエは、気が強くて度胸もあり、愛しい息子のために「1億円貯金」をしているという可愛い性格。
世間知らずで乱暴で、善人ではないという自覚があるが、卑劣な人物に思わず胸が悪くなるのを何とか抑えようとする姿は応援したくなる。
エネルギーの強さを行動力に変えているので、周りには同じようなエネルギーの強さの人が多くて個性が豊かだから飽きない。
そして表現の仕方が独特で面白いので一文が長くても心地よく、リズムよく読めるので没頭できる。