母と二人、「あの人」から逃げながら各地を転々としてきた無戸籍児の玲菜。
もちろん学校にも行ったことがないけど、優しい母にきちんと躾けられてきたから勉強も得意。
いつものリサイクルショップで出会った風変わりな男・周東に頼られなんとなく手助けするうちに、玲菜はこの店の人たちに癒されてしまう。
ある日、母から急に「あの人に見つかった。必ず連絡するから、帰ってきてはダメ」と言われ、周東のリサイクルショップに居候することになってしまった。
戸籍がなく、学校にも通えず、友人もすぐに入れ替わるような生活をしているのに、玲菜は母と仲良しで、優しく育てられていて歪んだところもない。
そんな生活が続いていたのに、なぜか今の街にはなじんでいるような気がして不思議に感じていたら、突然やってきた逃亡生活の終わり。
理由はすぐに明らかになる。
事実に愕然とはするが反発する気は起きず、頼もしいリサイクルショップの店主と飄々とした周東のおかげで淋しくもないし、むしろこれで「普通」の生活が手に入るかもしれないと期待をしたりしている。
事件としては10年以上も続いた残酷な出来事なのに、とてもさっぱりとしていて涼しい風に吹かれているような気分の話だった。