警告


 リッチモンドへやってきた船のコンテナの中から、腐乱死体が見つかった。
遺体についていた嬰児の毛のような薄く細い毛。フランス語で残されていた狼男のサイン。密航者だとしてインターポールに問い合わせをするケイ。いけ好かない上司に降格させられたマリーノと共に、ケイはフランスまで呼び出されることになる。

 奇妙な犯人像。これまでの、到底理解できない思考を持った犯人とはまた違った強烈な印象を残す。
マリーノとの言い合いは相変わらずだが、だんだんマリーノの言動が壊れてきているように感じて不安になる。
そのうえルーシーまで不安定になっていて、ケイを含めて誰もが危うい。
言い争いばかり増えている気がする。
この狼男と、新しい年下のボーイフレンドが次のキーパーソンか。

スモッキング刺繍のセーター


使用糸:パピー クイーンアニー(833)
編み図:「今着たいセーター」から
      スモッキング刺繍のセーター 643g

フードつきコート


使用糸:ハマナカ アルパカリリー (112)
編み図:おでかけニット No.5 から 
     フードつきコート 610 g

リケイ文芸同盟


 数学をこよなく愛する根っからの理系である主人公・桐生蒼太。
彼が務めるのは出版社の文芸編集部。理論的なことが全く通用しない「感覚」で仕事をする人たちとの葛藤のお仕事小説。

 全く違う分野に一人入り込むことの難しさは、言葉にしにくい。
感覚も常識も考え方も違うために話がかみ合わないもどかしさは蓄積するから。
 そんな環境を生き抜こうと決めた桐生が、腐れ縁の同期と起こした理系文芸同盟が、ミリオンセラーを出してやると意気込むところはまさに「お仕事小説」。そして、半ばに危機が訪れ、「4章でピンチは一度ではなく、畳みかける」を4章で起こす。最後にタイミングを見計らった驚きのニュース。
小説内で起こす定石をすべて盛り込んであるし、話の中で出てくる小説たちともリンクさせている。
ただ、中身が共感できるかのみ。

名もなき星の哀歌


 昼は銀行員として働く良平と漫画家志望の健太。
二人には裏の仕事がある。それは人の記憶を売り買いすること。
ある日二人は路上で歌を歌う星名という女性のことが気になり始め、医者一家焼死事件との関わりを見つけた。
そして店の仕事を使って探偵をすることを思いつく。

 二人の仕事が面白くなり始めるのは後半。
それまでは退屈で、何も起こらないまま終わるのかと思い始めた頃だった。
政治家の汚職、火事の真相、良平と健太の記憶、そして店の仕事などが、やっと起動し始めてからが本番だった。
前半の退屈がなければもっと引き込まれたかも。

鹿の王 水底の橋


 オタワルの医術師ホッサルは、祭司医・真那の招きに応じて恋人ミラルとともに安房那領へと向かう。そこでホッサルは、清心教医術の発祥の地と言われたその地が、実は他の医術をもとにしたものだという、清心教医術の最大の秘密に触れてしまう。
そしてそのことが、ホッサルの人生を変えるかもしれない選択を迫ることになる。

 「鹿の王」の強烈な印象がどう広がるのかが楽しみだったが、全く別の角度だったために、「鹿の王」を読んでいなくても十分楽しめる話だろう。
考え方の違う医療の話が、こんなにすっきり明るい希望をもって終わるとは思ってもみなかった。
数年先のミラルの才気が飛び出してくるようだった。

江戸前浮世気質 おちゃっぴい


 本石町の裏店に住む者たちの、一人を主人公にして日々の出来事や思い。
町のおてんば娘と言われるお吉の嫁入り話まで、お江戸に住む人たちの悲喜こもごもな短編集。

 どれもほっこりする話。
いろんな世代の人が集まっていて、いろんな見方をするから、誰か一人に肩入れすることなく、すべてを受け入れられる。

業火


 キャリーからと思われる不気味な手紙を受け取ったケイ。
ベントンとの逢瀬も後味の悪いものとなり、ケイはそのまま、次の事件へと向かった。
それは農場の火事で、競争馬が20頭ほども道連れになったという。
そしてバスルームで見つかった、傷だらけの遺体。

 ゴールトとの決着がついたというのに、その相棒ともいえるキャリーが脱獄したと言われておびえるケイ。
ルーシーはヘリの操縦までできるようになっており、ケイはこれまでのような、何でもできる天才といったイメージをルーシーに明け渡したように見える。
最後は衝撃的で、キャリーの生死がはっきりしていない分不気味な後味が残った。
また主要人物を殺す作者。

接触


 ごみ収集所で見つかった、手足と頭のない、胴体だけの死体。
同じ手口ですでにもう何件も続いていた事件に、ある日ケイの家に被害者の切断された手足が写った電子メールが届く。
発信者の名は、deadoc。ケイは慄きながらも、遺体の体の小さな発疹に目を付ける。

 最後は知らないうちに犯人の元へと乗り込んでいたケイ。
目に見えない凶器の話はやはり怖い。
が、最後の遺体だけ違った特徴があった件について、布をかぶせたことは理解できたが、切断面が違っていたことについての説明はなかった。このシリーズは、こういった推し量るしかない事が結構多い。
主人公が検死官で、化学で事実をつかもうとする話で、事実をはっきりできることが放っておかれているのはどうにも後味が悪い。