売色稼業の西田屋に拾われ、店の娘分として育った花仍は、主の甚右衛門の妻となり、女将となった。
夫の甚右衛門が13年越しに御上に願い出ていた「売色御免」が認められ、徳川幕府公認の傾城町・吉原を作り上げたが、それからも、奉行所からは無理難題を突き付けられ、さらにすべてを焼き尽くす大火事も出た。
そんな吉原の時代を生き抜いた一人の女の生涯。
花仍が何を思い、何を願って生きたのかがじっくりと描かれていて、事が起こるたびこちらもいちいち息をのんだり苦しくなったりと、感情を振り回された。
吉原の悲喜こもごもではなく、遊女屋としての形を成す過程が書かれたものはあまり見ないので興味もそそられ、花仍が人生の最後に思った艶やかな景色が目に浮かんだ。