とむらい屋颯太


2019年11月08日 読了
 江戸で、葬儀の段取りを生業とする颯太。
人手や提灯、棺桶、死に化粧から坊主まで一通りなんでもそろう「とむらい屋」。
その冷めた口ぶりには、人の生き死にを多く見てきたから故の思いがあった。

 弔いは残された人のためにあるんだという颯太。
人死を金にすると、近所からは遠巻きにされる職業だが、人は必ず死ぬ。
序盤は割と退屈で、淡々と仕事をする颯太を強調していたが、やがて彼がなぜそんな仕事を選んだのかが明らかになって来る。
生きたから訪れる死であり、それらは繋がっているのに、この世とのつながりを切る死と、生きている人同士の繋がりの対比がくっきりとしていた。

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スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官


2019年09月21日 読了
 杉並区で見つかった男性の腐乱死体の司法解剖の際、その場にいた者全員が発疹や出血、痒みに襲われた。原因を突き止めようとする赤堀と、事件を追う岩楯。しかし、二方向の捜査には、うっすらとした共通点しか見つからず、犯人の目星も一向につかなかった。

 今度は二手に分かれる赤堀と岩楯。もうすっかりお互いを信頼している。つかみどころのない深水のキャラクターも面白く、奇怪な行動を取る赤堀との対比もくっきりとしてわかりやすかった。相変わらず表現方法が楽しい。
このところ毎度のようにどちらかが死んでもおかしくない怪我をしているのが怖い。毎回そんな事件ばかりじゃないはずなのに。

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高校事変


2019年08月02日 読了
 ベトナムから帰化し、バドミントンのオリンピック選手となった田代のいる高校に、総理大臣が訪問することになった。しかし、そこへ武装勢力が突入し、高校は戦場と化す。
ただひとつ計算外だったのは、その高校には、平成最大のテロを起こし、死刑になった男の娘・結衣がいたことだ。

 平和なはずの高校が一瞬で戦場となることに、違和感は思ったほどなかった。
反社会的な知識をつめこんだ結衣の活躍が余りにも予想外だったために、目が離せないまま、あっという間に読めてしまう。荒唐無稽な話ではあるけど、今すぐ続きが読みたくなった。

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スクエア: 横浜みなとみらい署暴対係


2019年06月26日 読了
 「ハマの用心棒」と渾名される神奈川県警みなとみらい署刑事組織対策課暴暴力団対策係係長・諸橋。彼の下に、県警本部長からの要請である殺人事件の捜査に加わることになった。マルBにも関係があるという。

 最初の事件から次々と他の事件まで加わって来るため、分厚い本の割に進みが早い。飽きる間もなく次への興味がわくところは、相変わらずクオリティ。
だけど登場人物が覚えられないのも相変わらず。
2時間ドラマにぴったり。

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さよならの夜食カフェ-マカン・マラン おしまい


2019年06月23日 読了
 今回シャールの夜食カフェ客は、亡き母の行きたかった学校へ通うJKの希美。
近頃仲良しグループとの付き合いがギクシャクしている。そして迷い込んだ「マカン・マラン」で、強迫観念のようになっていた母の面影から脱出する力を得る。

 回を重ねるほど客の心が疲弊していて、シャールは優しく料理を出す。
前作で料理人の省吾と共に世界一のレストランで修行した庸介もまた、「マカン・マラン」に縁を持つ。こうやって色んな繋がりが生まれている様子は、世界が広がる感じがして楽しい。どす黒い負の感情をも隠さずにいられると、浄化も早いのかもしれない。4部作のシリーズは終わったけど、いつか、シャールを見守り、忘れられない言葉や料理を出した人が出てくるといいなぁ。

きまぐれな夜食カフェ – マカン・マラン みたび


2019年06月21日 読了
 ドラァグ・クイーンのシャールが夜だけ気まぐれに開くカフェ「マカン・マラン」。
縁があれば開いている時に行ける店。
そこへ今回やって来る人は、味がわからなくなった料理人や、ネットで批判ばかりしてしまうOL、そしてシャールの後輩だったけど、不遇な結婚をしてしまった女性。

 シャールの過去が垣間見えた今回。客としてやってくる人たちも今回は今までより深刻な感じがした。じんわり温まる話ばかり。私がこんなに穏やかに人を見れるようになるには、どれだけかかるだろう。

お茶壺道中


2019年06月16日 読了
 宇治から江戸へと、最高のお茶を将軍様へと運ぶ行列。
それを見るのが何よりの楽しみだった仁吉は、日本橋の葉茶屋・森山園の奉公人となる。
 大旦那の太兵衛に目をかけられていたが、そのせいで孫娘のお徳からは厳しい目を向けられていた。そんな仁吉が、旗本の阿部正外の屋敷を訪ねることになり、その出会いが彼の人生を大きく動かす。

 お茶が何よりも好きな仁吉の素直な熱意が、成長とともに視野を広げ、森山屋の危機を幾度も救う。お家騒動や逆らえない時世の動きに立ち向かう姿がたくましい。最後にはホッとできる。

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逃げ出せなかった君へ


2019年06月13日 読了
 ブラック企業に入社した三人の同期、大友、夏野、村沢は、心身ともに疲れ切り、それでも逃げる術を見つけられなかった。
そんな中、ネット中継で夏野が自殺する。

 読み進めるのが辛いくらいの内容。
夏野の自殺で一転、3人が人生で一番うまいビールを飲んだ居酒屋へ視点が移り、そこからまた次へと、夏野から広がる人間模様がつながっていく。
一つ一つが心をキュッと締め付けるような出来事。
切ない内容ばかりだけど、一番うまいビール、が心を満たすアイテムとして印象的な余韻を残していた。
 ドラマ原作大賞受賞作「被取締役新入社員」の作者。

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逃げ出せなかった君へ [ 安藤 祐介 ]
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夏を取り戻す


2019年06月03日 読了
 夏休みだというのに、ほとんど毎日塾通いになった、小学4年生の仲良し5人組。
彼らが突然、一人ずつ行方不明になっては4日後に戻ってくるという事件が続いた。
 都内の古びたビルにある月刊ウラガワの編集者である猿渡は、その事件を調べる佐々木というフリーの記者と共に連続失踪事件を調べることになった。

 子供たちが考えた他愛のないトリックと悪戯が、大人たちに挑戦状を送ったというだけの事だったはずが、その夏の大事件にも関連する大きな謎を解く羽目になる。最後はいくつもの驚きが重なり、時間を忘れてあっという間に読めてしまった。

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夏を取り戻す (ミステリ・フロンティア) [ 岡崎琢磨 ]
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図書館司書と不死の猫


2019年05月30日 読了
 愛妻を亡くし、ケンブリッジの図書館を定年退職したばかりのわたしのところに、ある日妙なメールが送られてきた。
いくつかのファイルが含まれていたメールを開き、好奇心を持ってしまったために、わたしは奇妙な出来事に巻き込まれる。
 それは九つの命を持った、しゃべる猫の話。

 ミステリーでホラー。念じるだけで相手を殺せる力を持った猫なんて、想像しただけで怖いけど、じっと見つめてくる猫の不気味さがよくわかる。
構成がばらばらな気がするのもわざとのようで、それが一層予測のつかない未来を感じさせる。
時代と人物が入り乱れるので少し混乱した。

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図書館司書と不死の猫 [ リン・トラス ]
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