黒龍荘の惨劇


2019年04月04日 読了
 山縣有朋の別邸・黒龍荘で、金庫番である漆原安之丞が謎の死をとげた。
調査依頼を受けた探偵・月輪と杉山潤之助が邸に住み込んで調査をするが、館の住人がわらべ歌になぞらえて次々と殺されていく。
月輪は懸命に捜査をするが、犯人の影さえつかめない。

 このシリーズを一つ読んだと思うが、全く記憶にない。
探偵の月輪は自信家で、何があってもめげず、次々と手をかgな恵だし打って出る様子は飽きさせない。
そして最後の思いもよらない結末。まさに惨劇というにふさわしい。
館の住人の誰もが、どこかおおきな恐怖を抱え、何かにおびえているといった印象からここにつながったのは意外だった。
ただ、主人公の杉山潤之助の印象が薄すぎる。

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キリングクラブ


2019年03月21日 読了
 ジムで知り合った千沙に誘われ、「キリングクラブ」という店で給仕をすることになった藍子。
そこは、人口の1%は存在すると言われるサイコパスの中でも特に成功したサイコパス達が集まるクラブ。その会員が、連続して殺害されるという事件が起こる。

 何事にもさして感情を揺さぶられることがなさそうな藍子。
連続する殺人の犯人を追う立場になっても淡々としている藍子の本性は、最後になるまで明かされない。すっかり騙された。
殺人にすら興味を示さないクラブ会員の様子に、知恵ものの藍子すら翻弄されていると知ってさらにうすら寒い思いがした。
後味の悪さはあるが、イヤミスとは少し違って嫌悪感はない。

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草々不一


2019年03月04日 読了
 江戸。兄がいたために奉公に出、商人としての面白みを知り始めた頃になって跡継ぎとして連れ戻された真吾。武士としてお役を頂くために日々努力してきたが、、。分不相応な格の家に婿入りすると、妻から3つの約束をさせられる。
 など、江戸で生きる人たちの生き様をいくつか。

 武士は文字など読めなくともいいと意地を張っていた男が、妻が残した文読みたさに子供たちに交じって手習いに通う。
最後がほっこりする話がいくつかあり、それを、合間の他愛もない物語が引き立てる。
 意地を張ってもそれを大らかに受け止める人がいるのは、傍から見ても微笑ましい。時間をかけてじっくり読むのに向いている。

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雨上がり月霞む夜


2019年02月15日 読了
 紙問屋・嶋屋を営んでいた秋成は、火事で家を失う。
家業を失った秋成は、幼なじみの雨月が結ぶ庵のもとに居候して医者を目指すことにしたのだが、その庵の主の雨月は極度の人見知りで、秋成の他には会おうとしない。しかしそんな雨月のところに、ウサギの妖がやってきた。

 雨月と秋成は、子兎に姿を変えた妖の「遊戯」といることで、不思議に出会う。
それらはただ悲しい終わりしか招かなかったり、また救ったりもするが、どれも総じて暖かい終わりとなる。
『雨月物語』を知らなかった。手に取ってみたくなった。

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青炎の剣士 (紐結びの魔道師3)


2019年01月31日 読了
 相変わらずの執念で襲い来る化け物と闘いながら、一方では元コンスル帝国軍人ライディネスの襲撃にも備え、やることがいっぱいのエンス達。
古の巫女の結び目もまだ解けない。

 自分に悪意を持つものではないのになぜ執拗に追って来るのか。
恨みを買わなくても悪意はむけられる。ただ本人が目を付けただけで。
緊迫する戦いの中でも、時々ふっとトゥーラに向ける思いが溢れて和む。
定石の結末となったが、もっと彼らを見てみたいと思う。
特に、別の視点からのライディネス。
そしてダンダンに乗ってみたい。

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対岸の家事


2019年01月23日 読了
 家族のために、家事をすること。
それがこんなにも大変だなんて、誰も言ってくれない。
家事と、育児と、仕事と。

 苦しくて死んでしまおうと思うほど追い詰められる人たちが、どんな思いでいるのかをじっくり書いてあるので、読んでいて苦しくなる。
それは女だけの話ではなく、育児休暇を取った男性でも同じ。
これは、家事を”手伝っている”と言っている人たちに是非読んでほしい。
切実すぎてうなされそう。

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機巧のイヴ


2018年12月27日 読了
 十三層の巨大楼閣の頂点にいるという太夫の名を付けた伊武は、精巧な機械でできたオートマタだった。
幕府転覆を狙う技工士が作りだしたと言われていたが、それははるか1000年も前の技術であった。

 伊武に惹かれた男がまた一人、その技術を学び、伊武を生かす。
艶めいた出来事はないが、代わりに精密な機械の動きに驚かされ、興味をそそる。
伊武に関わる秘密が少しづつ明らかになり、やがて大きな野望を浮き上がらせる。
最初から最後まで、オートマタの技術に引き込まれていたため、久蔵や幕府の隠密たちがどう動いて何を企んでいたのか少しも気づかなかった。
伊武を動かせる人は、一つの時代に一人だけとなるため秘密は漏れない。

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片翼の折鶴


2018年12月19日 読了
 ある日病院に連れてこられた救急患者は、極度の貧血だった。
しかし、点滴で充分な補充をしたにもかかわらず、一向に改善しない。
そして患者は昔、瀉血を繰り返していた。
 おかしな現象と思われる症状を見て、不思議と原因を言い当てる医師・西丸は、”臨床探偵”と渾名されていた。

 西丸の大学時代を描いた「消えた脳病変」が、第十一回ミステリーズ!新人賞受賞作。

 患者を信じたいが症状からは納得できないと悩む若い医師たちの様子を眺めながら、真相を言い当てるまさしく『探偵』。
その根拠ももちろんなるほどと思わせ、こちらの未熟さを静かにフォローしてくれる。存在感があまりないように書かれているのが、今までにない探偵。

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雲上雲下


2018年11月24日 読了
 いつからいるのか、枯れもせず、動けず、ただじっと毎日を過ごしていた草のところに、ある日子狐がやって来る。山姥も姿を現し、やがて草の語る『話』に耳を傾ける。

 草が語る話は、どれも知っている昔話。
子狐の寝物語に語るうち、だんだん現実と交差していき、草の下にやって来る旅人も登場人物となり。現実となる。
不思議な昔話だと思っていたら、予想外の展開に。
神は人が作り出し、人から忘れられれば消えてゆく。
神ですらも、予見できず抗えないことがあるという。

 今までの朝井まかてにはない分野だった。

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ミステリー・アリーナ


2018年11月16日 読了
 毎年年末に行われる国民的娯楽番組《推理闘技場》。
新たにできた法律を支える文字通り命を賭けた戦い。
10回目の今回は、キャリーオーバーで20億円の賞金という、知を尽くして生き残る番組に予選を勝ち残ったのは、ミステリーオタクたち。
まだストーリーが読み上げきれてない時から一度きりの回答権を使いながら推理していく。

 死ぬか20億かの選択で、ハラハラしながら読み進める。
でもだんだん胡散臭くなってくる。
それでもカラクリがわからず、どうなってしまうのかと興味をそそられるばかりで、予想もつかない。
残酷な話ではあるけど突飛すぎて感情移入もできず、そのおかげで壮大な仕掛けのあるミステリーを楽しめた。

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