夜のだれかの玩具箱


 少年の頃の辛い記憶から抜け出せないまま故郷に帰れない男、記憶にないがおかしな名前のバーの名付け親だと言われた男、突然消えた女房の夢を見る男など、どこかで読んだことがある昔話。

 小話なので読みやすく、怖い話も淡々と語られているので追い詰められることもない。
ただ、次の話を読むともう前の話はすっかり忘れてしまっているくらいに印象は薄い。

断罪のネバーモア


 不祥事が続き、ついに一部民営化を果たした警察。
茨城県つくば警察署の刑事課へIT企業から転職した新米刑事の藪内唯歩は、警部補の仲城流次のパートナーとなり、殺人事件の捜査を始める。
しかし、好き勝手に動き回る仲城や、自分にだけ隠し事をされている様子に疲れ、唯歩はしだいに自信をなくし、気を滅入らせていく。
それでも踏ん張り、いくつかの事件を解決していく唯歩だが、7年前の事件との関連や、これまでの事件でのかすかな違和感から、真実に気付き始める。

 パラレルワールドのように、少し違うシステムを持った今、が描かれる。
ブラック企業にいた頃のトラウマからキーボードを打てなくなっていたり、皆の隠し事に傷ついたする、リアルに思い描ける様子と、実際とはちょっと違う事件やシステムの架空の設定とが入り混じり、熱でも出たかのような現実感のなさが続く。
そして一層ややこしい事態になって、混乱させたまま終わり、狐狸妖怪に化かされたかのよう。
『ジェリーフィッシュは凍らない』のシリーズより混沌としていて、すっきりしなかった。

捨てられ白魔法使いの紅茶生活


 養護院で育ったアマリアは、白魔法が使えた。
少しでも養護院の助けになればと、旅の冒険者一行に誘われて魔物討伐に出かける。
ある日、力以上の依頼を受けた一行の竜退治に失敗し、アマリアは囮にされて捨てられてしまう。
黄金の竜を前に、死を覚悟したアマリアだが、なぜか竜に助けられ、一緒に暮らすことになった。

 最初はどうもアマリアの受け答えがおかしくて、これはただ都合がいい事が起こるだけで物語になっていないのではないかと思っていたが、次第に解消される。
紅茶が大きな意味を持ち、竜が姿を変えた子供の愛らしさ、子ども扱いしていた弟分の素敵な成長、成り上がった冒険者のぼんくら加減など、王道のアイテムですんなり読み進められるようになっていた。
悪い心を持った者から姫を救い出す、おとぎ話。

都知事探偵・漆原翔太郎 セシューズ・ハイ


 イケメンだがお調子者の元国会議員・漆原翔太郎は、その計算なのか出まかせなのかわからない熱弁で東京都知事となる。
就任早々「お近くの首長を辞めさせてみろ」と言い放った。
その後も、ゆるキャラ殺害や都議会襲撃予告、アール大国の王女の来訪で秘書が言い寄られるなど、ちょっと普通でない事件ばかり起こる。
そして秘書の雲井は、毎度知事に振り回され、天才なのかおバカなのかと頭を悩ませていた。

 ドタバタで焦りまくりの秘書・雲井をしり目に、能天気で好き勝手に動き回る知事。
お騒がせ具合ではドラマの「警視庁0係」や大倉 崇裕の「警視庁いきもの係シリーズ」と似ているが、この二つほどほのぼのとした感想が出ないので、なんだか読んでいて苦しくなってくる。
秘書のくせに雲井がバタバタと大慌てになり、少しも余裕がなさそうに見えるのが情けなさすぎるせいか。

ロータスコンフィデンシャル 倉島警部補シリーズ


 ゼロ」の研修帰りのエース公安マンでる倉島は、ロシア外相の随行員の行動確認をしていた。
同時期、ベトナム人の技能実習生が殺害される。
その容疑者にロシア人ヴァイオリニストが浮かび、一方、外事二課で中国担当の盛本もこの事件の情報を集めていることがわかる。
いつしかこれは、ロシア、ベトナム、中国が絡む事件となっていた。

 ロシアのスパイを絡ませるのが好きな作者。
今度は中国も絡んできた。国同士の争いというにはなんだか小さい事のような気がして拍子抜けしてしまった。
登場人物も個性はあるのに区別がつきにくい。

めぐり逢いサンドイッチ


 靭公園にある『ピクニック・バスケット』はサンドイッチ店
笹子と蕗子の姉妹でやっている小さな店だが、常連もいて毎日楽しい。
やってくるお客さんの中には悩みを抱えた人もいて、タマゴサンドが嫌いだという人には故郷のタマゴサンドを、コロッケが憎いという人にはサンドイッチにしておいしく、店主の笹子がふんわりとパンにつつんでくれる。

 ほんわかした笹子の雰囲気が心地よい店となっている。
どんな人も優しく見つめている感じがするが、穏やかゆえに印象も薄い。

死にふさわしい罪


 一族でするクリスマスパーティーの準備を手伝うため、母方の伯父の別荘へとやってきた和典。
駅で出会った不思議な女性が、隣家の人であり、また楽しみにしてて突然更新が途絶えた数学のブログの作者の妻だと知り、和典は新記事の下書きがあるという女性に頼み込んで見せてもらうことにした。
ところがその女性の家では1年前、ブログの作者である女性の夫が行方不明となっていることを知る。
漫画家だった叔母が秘密を握っていると思い、女性の家を訪ねてみるが。

 少女をターゲットにした作品や、中世ヨーロッパが舞台の作品では、一文字も読み漏らすまいというほどの集中力を持って読んだのに、少年が主人公のこのシリーズはとたんにつまらなく感じるのはなぜだろう。
同じように緻密な設定と興味深い専門分野の知識が織り込まれているが、どうも熱中できない。

高校事変 XI


 慧修学院高校襲撃事件後、日本で緊急事態庁が発足した。政府の行動力のなさを押し倒して次々と打ち出す政策に、日本は好景気となる。
日本近海に油田も発見されたと思い込まされ、国民は浮かれていた。
そして、ホンジュラスの襲撃からも何とか生き残った結衣は、帰国する。
緊急事態庁を操っていた優莉架祷斗が日本を支配し、破壊しようとする場に向かうため。

 優莉の兄弟がだんだん集まってくる。
戦う相手が兄弟になってきた頃から、規模は大きいが小さい世界の争いとなり、途端につまらなくなってきている。
結衣の母が誰かも明かされるが、ほかのシリーズとの関連がこんなに違和感を出すのは珍しい。
同じように、ほかのシリーズと絡む樋口有介のものは、見つけると嬉しくなる関連だったのに。

ファウンテンブルーの魔人たち


 5年前、新宿に巨大な隕石が墜落し、一帯は壊滅状態に陥った。
そこへ再開発してできたのがブルータワーで、その一室に小説家の前沢倫文は恋人の英理と住んでいた。
ある日、アメリカ、ロシア、中国のロケット開発に関係していた人物が突然死する。そして現場では「白い幽霊」が目撃されていた。
特殊な癖を持っている前沢は、マンション内を偵察し始める。

 近未来の巨大タワーを舞台に、前沢や英理、そしてAIロボットのマサシゲが、新宿へ落ちた隕石の謎と、タワーの地下深くで進められているある計画を探る。
主人公の頭の中を、考えていることをつらつらとそのまま垂れ流しているようで長い。それでも淡々と描かれていて感情的になることがないので割とすらすらと読めた。
ただ隕石をめぐる各国の政治的な陰謀が暴かれるのかと思いきや、もっといろんな人の目論見が集まっていて、最終的にはなんとなく解決へ向かっているようなというあたりで終わっていた。
結局は事件というより人間の進化の選択肢を見せたもので、こんなこともあるかもねという想像が膨らんでいき、最初の疑問はもうどうでもよくなったかのよう。

Team383


 自分でもそろそろと思っていたもの、免許の返納。
タクシーの運転手をしていた葉介は、家族に進められ、返納の手続きを行った。
すると帰りに、同年代の小太りな男性に声をかけられる。
「ママチャリカップに挑戦しましょう」
近所の中華料理店を本拠地にして、70代の男女がママチャリレースに挑む。

 チームを組んだ5人は皆同年代。
練習のあとは中華料理店でビールを飲むという新しい習慣を手に入れた葉介。
そしてメンバーそれぞれの問題や人生を、それぞれの視点で描く。
病気や家族の問題など様々だが、割と普通で印象に残るようなものはない。
キャラクターの個性にしても、現実的な範疇で突飛ということもないため、身近ではあるが区別もつきにくい。