オブリヴィオン


 妻を殺害した罪で4年の服役後、出所した吉川森二の迎えに来たのは、二人の兄だった。
ヤクザものの兄・光一と、妻の兄の圭介。
森二は人との関りをできるだけ排していこうと決めていたが、住み家とした古いアパートの隣人・サラや、娘の冬香、そして兄たちとの間に次々と起こる出来事に追われる毎日になる。
妻を殺したことがいつまでも癒えずに過去を思うだけの森二と、そんな森二と関わることが辛いのに逃げられない兄たちとの関係が、暗く重くのしかかる。

 物騒な出だしで、ずっと暗い調子で進んでいき、すっと気持ちが冷えるような場面が続く。
そして過去と現在を交互に語ることで、思いはずっと過去にあるという森二の様子が印象付けられる。
でも後半で急に反転したように物事が進み始め、前を向く気持ちが沸いて森二の言動を変える。
 ひどい出来事ばかりが明らかになる割には暗くならず、それぞれ気に食わないと思っていた相手に助けられたりして、登場人物の印象をすっかり変えて終わったため、すっきりした気持ちで読み終えることができた。

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