白光


 日本人初のイコン画家として生きた山下りん。
明治、日本女性初としてロシアの女子修道院に渡ったが、美術を学ぶつもりであったりんは、修道院でのやり方になじめず、5年の任期を待たずに帰国する。
それでも、聖像画師として30年以上を過ごしたりんは、300点以上の絵を描いた。
自分の求める絵の技術と、信仰のための絵との隔たりに苦悩しながら生きた、一人の絵師の物語。

 本当は美術を学びたかった。
けれど周りが求めていたのは信仰となる絵であった。
そのため留学先でも指示されることに納得できず、やがて体が拒絶する。宗教画には無用の絵師の個性が抑えられずに苦悩するりんの様子が痛々しい。
そして、どんなことがあっても絵を描き続けるりんの強さが最後まで貫かれていて、イコン、正教の日本での歴史、大聖堂の描写、様々なことを調べながら、長さも気にならず一気に読んだ。

にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。