三度目の奉公先を勢いで辞めてきたおれん。
毎回仕事先を紹介してくれていた口入屋に顔を出すと、見慣れない若い女が座っていた。
聞くと、2年前に祖父から継いだというお貫は22歳だという。
小娘なら簡単に紹介してくれそうだと思ったが、これまでの辞め方に問題があると断られ、カッとしたおれんは他をあたるが見つからず、消沈して家に帰るとそこにはさっきのお貫がいた。
「口入れ屋の主人と言えば、酸いも甘いも噛み分けた食えない年寄りが相場」のはずが、若い女主人がいて誰もが始めは見くびる。
しかしその度胸と人を見る目でお貫は侮れなかった。
「口入れ屋は商売だけど、口出しするのは性分なんで」というお貫。
口出し屋と聞いて最初は新しい商売かと思ったが、だんだん納得がいってくる。
決して甘くはないが、こんな人と知り合いになればさぞ心強いだろう。
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