寛政六年春、日本橋通油町にある地本問屋の「耕書堂」で女中として働くお駒。
ある日買い物に出る途中に見かけた、この辺りでは見ない雰囲気の男。
その人は、「耕書堂」の主・蔦屋重兵衛から写楽と名付けられた絵師だった。
五月興行が始まり、「耕書堂」に並んだ錦絵は人々を驚愕させる。
気を良くした重兵衛は、次の興行で売り出す絵の手伝いをお駒に命じ、それからはひたすら線を描く練習を始める。
写楽の物語の中では割と軽めのお話。
写楽の人物像も、秘められた謎の人物というより寡黙で実直な部分を強調してあり、さらにお駒は北斎の幼馴染としている。
当時名を馳せた絵師たち。そしてその中で、写楽に寄り添った女の話として、お駒から見た絵師たちの時代を描く。
読みやすく、また登場人物の個性がはっきりしていて悲壮な部分もなく、ただ錦絵の世界を楽しめる。
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