編集者の月子は、担当する小説家・夢宮宇多への恋心と、仕事へのままならなさに悩んでいた。
ある日、ベストセラー作家である星寛人が自宅マンションの屋上で死体となって発見される。しかも真夏にもかかわらず死因は凍死という不自然さで。
直前に星がSNSに短編小説の最高傑作ができたと投稿していたため、各出版社の編集者による大捜索も行われたが、死の真相も短編の行方もわからずじまいだった。
星の内縁の妻・長崎愛璃、月子の友人・浜岡有希、外部編集者の糸里、人間関係が様々に入り乱れる中、アンデルセンの「雪の女王」を夢宮の誘導で月子は少しずつ読み解きながら、真相を手繰り寄せる。
言葉と、それを紡ぐ人の個性とをうまく解きほぐす夢宮の様子に、黒猫シリーズを思い出す。
黒猫のようなクールさも、深さもないが、その分身近な題材を用いてわかりやすくしているような感じ。
だけど登場人物の魅力という面では黒猫のほうがしっかりと人物像が作られているためイメージしやすい。
夢宮は、月子の妄想で生み出した人物のような雰囲気だったため、煙に巻かれて終わったような気になってしまう。
事件と、人物と、動機や真相といったことよりも、夢宮と月子の「雪の女王」の解釈が強く印象に残る。
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