夢ほりびと


 リストラされ、再就職がままならないと気づいた佐伯は、家出をした。
そしてたどり着いた廃墟には、同じようにままならない人生から逃げてきた人たちがいた。
借金から逃げてきた夫婦、リストカットがやめられない女子高生、ビッグウェイブを待っているサーファー。そして廃墟の主、惚けたじいさん。
庭に宝が埋まっていると信じている家主と一緒に庭を掘りながら、佐伯は帰るに帰れず、そっと家族を覗く。

 池永陽の話はいつも暗い。
静かでゆっくり流れる時間は水底から覗いた景色のような現実感のなさで、暗くてじっとりしている。
今回は弱い人間があつまっているため、ことさら暗く感じる。
元気が吸い取られていくようで鬱々とする。