ウェルテルタウンでやすらかに


 推理作家をしている私の元へ、おかしな依頼が舞い込んだ。
過疎化した町の人集めに、小説を書いてほしいという。しかも町を、自殺の名所にしたいというではないか。
そんな依頼は受けたくないが、何の因果かその町は私の実家がある町であり、そこから逃げ出してきた身であり、だが自殺の名所にはしたくはないという複雑な気持ちが巻き起こる。

 おかしな依頼をしてきた人物はいかにもうさん臭く、町の自殺の名所を次々案内する様子もコミカルに描かれているし、出てくる住民も変わった人ばかり。
自殺という暗いイメージとはかけ離れた雰囲気なのでコメディとして楽しめる。
でも最後にはこれまでの事がどれも裏の意味を持っているようで考えさせられ、どれもどこかで関係があっていちいちハッとさせられる。
分かりにくさはあるものの、いろんな仕掛けに気づくとより楽しめる。