テラ・アルタの憎悪


 何度も補導され、刑務所へ入っていたメルチョールは、獄中でユゴーの『レ・ミゼラブル』と出会い、警察官になることを誓う。
そして移動になったカタルーニャ州郊外の町テラ・アルタで、富豪夫妻殺人事件の捜査を手掛ける。
老夫婦はひどい拷問を受けていたことから、夫妻の事業と家族にかかわりがあると見た。

 メルチョールが妻と出会った頃の幸せな時期の話がところどころに挟まれていて、メルチョールの人柄がそこで厚みを増している。
事件のひどさと田舎の閉そく感、被害者の傲慢さなど、いろんな要素が次々と盛り込まれて行って、捜査が進んでいる気がしないままメルチョールと共に無力感を感じながらも飽きることはなく、最後まで気が抜けない面白さだった。