カラスは言った


 ある朝、窓辺に止まったカラスに言われた。
『やっと見つけました。あなたを探していました』
カラスが言った人物は知らない人だったが、僕は職場の先輩と共にそのカラスを捕まえることにした。
するとカラスは、今世間をにぎわせている森林保護の活動をしている団体から消えた人を探しているとわかる。
そして突撃系動画配信者がなぜか僕を追っているといわれ、カラスと共にそいつから逃げることとなってしまった。

 そのカラスがドローンであることが分かり、迷惑系だという動画配信者から逃げるために一緒に行動することになった僕。
逃走経路や宿も教えてくれ、いつしか仲間意識まで芽生える。
カラスと一緒という不思議さが面白く、時に見つかりそうになりながらのひやひや感も楽しい。
しかしすべてが解決し、日常へ戻った僕がカラスを操っていた人物と会った時から一気に失速し、これまでの一体感や高揚感が消えて白けた感じになる。
カラスの中身だった人の気持ちが少しも入ってこなくなり、相槌を打つだけで共感はしないという、カラスと出会う前の僕と同じような状態になってしまい、感情が浮かんでこなかった。
世間から距離を置いて暮らしていた僕に戻ったようだ。

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