江戸にある芝居小屋・市村座。
その桟敷席を予約し続ける者がいるが、一度も姿を見せないという不思議な噂が出る中、その一座の一人・八重霧という女方が死んだ。
そこから始まる市村座の怪異は、女形瀬川菊之丞、戯作者平賀源内、二代目市川團十郎、講釈師深井志道軒、広島藩士稲生武太夫、大奥御年寄江島という、一座の役者やシナリオまで巻き込んだ大きな事件となっていく。
芝居小屋で起こる小さな怪異だと思っていたら、エンマ大王の一番補佐であったという小野篁、冥府まで出てくる大掛かりなものとなっていた。
役者の心意気や、昔江戸で起こった大事件をすべて芝居にして、最後は夢か現か、芝居か嘘かという、大きなはったりに引っかかってしまう。
大ごとになっていくたびに引き込まれていった。