地上最後の刑事


 アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞
小惑星が地球に追突することが確実となった世界。
新米のヘンリーは、ファストフード店のトイレで首を吊った死体を見つける。
未来を悲観して自殺したのだと思われたが、ヘンリーはその死体が、身につけている衣服の中で首を吊るのに使ったベルトだけが高級品であることに違和感を持つ。
世界はもうすぐ終わるというのに、同僚たちにあきれられながらも、殺人の可能性を感じて捜査を始める。

 世界の終わりが見えてきて、自殺者も多い世界。
槍の子としたことをするために仕事を辞める者、悲観して死を選ぶ者など様々ななか、一人殺人の捜査を始める。
人物の特徴がつかみにくく、人々が自分勝手でイライラする。
そして物語に引き込む魅力ある人物や出来事がない。

六色の蛹 サーチライトと誘蛾灯


 森でハンターたちが狩りをしている山で起きた、銃の誤射による殺人事件。
病院の近くで花屋をしている女性が1年前の約束を果たそうと季節外れのポインセチアを入荷していた日。
工事現場から、土器と思われるものと人骨が見つかったと歴史センターに連絡が入り、8年前の捏造事件が蒸し返された。
虫を追って日本のあちこちを旅する魞沢が出くわす事件。

 虫好きな魞沢が、なぜか事件に遭遇する。
人が死ぬ事件なのに、悲しくも優しい印象を残すのは毎度のことで、魞沢は誰も責めることなく犯人を見つける。
スカッと解決するようなミステリではないが、生きている人の心を一番大事にするような推理なのでふんわりとした印象。
そのため事件より魞沢の穏やかな印象が一番印象に残る。

もつれ星は最果ての夢を見る


 量子テレポーテーション通信の開発によって、遠く離れた星同士でも通信が可能になった時代。
宇宙開発コンペに参加するため、地球から十光年離れた星に降り立ったエンジニアの零司と相棒のAI・ディセンバー。
しかし割り当てられた場所に到着したとたん、他の参加者の遺体を発見してしまう。
コンペ運営本部との通信も途絶え、未開の星で孤立無援となった零司。
不審な宇宙船や参加者ではない人物と出会って命を狙われたりと、零司は本来の仕事ではない事に奔走することになる。

 はるか未来、地球以外の星へ人類が到達した後の話。
AIとペアになり、新しい星の新規開拓コンペに参加したと思っていた零司は、相次いでやってくる襲撃者にとまどい、やがて知らされる事実に愕然とする。
崩壊する地球からすんでのところで抜け出し、200年もの間冷凍睡眠で放浪していたという零司の行動が、そして彼の作り出したAIが、人類の行く先を決めるという大ごとにまで発展し、途方もない行く末を想像させる。
オープニングの、各コンペ参加者の様子を綴ったプロローグを読んだ時点では、つまらないと感じて一度本を閉じたが、暇に飽かせて続きを読んでみて良かった。
つかみは失敗だが本編はとても面白かった。

解錠師


 8歳の時の事件がきっかけで声を出せなくなったマイク。
だがあることに興味を示し、彼は驚くほどの才能を発揮した。
それは絵を描くことと、どんな鍵でも開けること。
やがて高校生となったマイクが、同級生に乗せられて忍び込んだ家で捕まったことがきっかけで、プロの金庫破りの弟子となる。
そこから続くマイクの人生を、彼の独白と共に綴る。

 子供の頃の出来事と、大人になり解錠師となったマイクとの二つの視点が入れ替わりつつ、彼の人生が語られる。
時に起こる大きな仕事と危険。
そうやってマイクが10年も入れられている刑務所からの独白へと続くが、一言も話さないのに周りの出来事だけで充分生き生きとしている。
それでも刑務所へと続く人生の話のため全体的に暗いイメージが付きまとう。
あちこちに飛ぶ時代と視点と、マイクの思い込みと好転しない人生とで、楽しく読めると言った雰囲気ではなかった。

十字路の探偵


 時計屋の二階に居候をしている探偵は、古本屋の主人から買った本を読んで、十字路に飛び出した。
その本には、まさに今起ころうとしている事が書かれていたのだった。
そしてその時出会った少女と共に、探偵は「誰かが死ぬ前に事件を解決する」と決める。

 誰も死なせないと決めた探偵だが、現在起こっている連続殺人事件が解けずにいた。
拾った少女と共に事件に挑むが、特に推理するでも観察するでもなく、ただゆったり眺めている。
勘を働かせるのはむしろ少女のほうで、ゆるっとした雰囲気でずっと進み、ぬるっと解決する。
なんだか薄い話だった。

初瀬屋の客 狸穴屋お始末日記


 訴訟の手続きや裁きが出るまでの間の宿を生業とする公事宿。
そこへ見習いの手代として入った絵乃。
絵乃自身も、借金と浮気を繰り返す夫との離縁を経験しており、訴え出る人たちの今後の人生が良くなるようにと仕事を張り切る日々だった。
そんな狸穴屋にやってくる客は、諍いや屈託を抱えている。

 主に離婚を扱う狸穴屋。
生業はいろいろだが、作者は人々の人情をじっくり書くものが多い。
今回も市井の人々ばかり出てくるが、皆なぜか影が薄い。
話も終わったら忘れてしまうようなものばかりで、印象に残る出来事はなかった。

高慢と偏見、そして殺人


 紆余曲折の末にエリザベスとダーシーが結婚してから六年。
2人が住むペンバリー館で、あらしの夜に起こった悲劇。
屋敷での舞踏会を控え、準備に忙しい人々のところへ、馬車が森からすごい勢いでやってきた。
乗っていたのはエリザベスの妹リディア。
彼女は、森で夫とその友人が馬車から出ていった直後、銃声が聞こえたという。
探しに向かったダーシーたちが見たのは、無惨な死体と、そのかたわらで放心状態のリディアの夫ウィッカムがいた。

 ジェーン・オースティンの古典の続きということだったが、それを知らなくても充分楽しめた。
エリザベスとダーシーの親族が起こした、残虐な犯行は、はたして本当にウィッカムの所業なのか。
状況説明がしつこすぎるくらいしっかりしていて長いと感じるが、真実は少し意外なところから出てきた。
エリザベスとダーシーの結婚に至るまでの話が気になりだす。

皇后の碧


 精霊たちが生きる世界。
鳥の精霊の王に拾われた、土の精霊の子・ナオミ。
羽は持たないが不自由はなく暮らしていたナオミはある時、風の精霊を統べる蜻蛉の精霊の皇帝から「私の寵姫の座を狙ってみないか?」と誘われる。
皇帝の後宮には皇后と愛妾(つま)がおり、彼の胸には皇后の瞳の色に似ている緑の宝石を選び抜いた首飾り「皇后の碧(みどり)」が常に輝いていた。
ナオミはなぜ自分に声がかかったのか訝りながらも、かつて鳥の王の妻であり、皇帝に召し出されたイリス皇后の様子を探りに、後宮へと向かう。

 八咫烏シリーズとはかなり印象が変わるファンタジー。
皇帝の横暴におびえる日々から、後宮の内部を見て回るうちに気づく事、立場によって見え方がこんなに変わるのかと驚く。
そのうえ鳥と虫との性質の違いがもたらす考え方の違いも大きい。
皇帝の秘密は大きかったが、イリスの秘密でもあり、納得させられる。

神学校の死

 
 サフォーク州の人里離れた全寮制神学校で、一人の学生が海岸の砂に埋もれて窒息するという不審な死を遂げた。
事故という結論に不満を持った父親が、警察に再調査の圧力をかけてきた。
真相究明のため現地へと赴いたダルグリッシュ警視長が調査を始めると、客として来ていた神学校の閉鎖を進めようとする教会幹部が教会内で殺される。
学生の死と関係があるのか、そしてダルグリッシュがいるにもかかわらず殺人が起こるという異常な状況で、真相にたどり着くことができるのか。

 危険だとわかっている場所で大量の砂で圧死という、事故か自殺かわからない学生の死から、次々と不幸が続く。
状況説明が長く、最初に明かされた少しのヒントだけで半分ほどまで進むので、何も見えてこないために飽きてくる。
最後の1/10ほどになってようやく面白くなってくるが、個性のあまりない神父たち登場人物の区別がつくようになるまで長かった。

魔法律学校の麗人執事1 ウェルカム・トゥー・マジックローアカデミー


 スポーツでも学業でも日本一の、修道院育ちの野々宮椿。
好きな男の子から「女としてみれない」と言われて落ち込んでいた時、魔法の天才・条ヶ崎マリスの執事にならないかと通りすがりのオジサンから誘いを受ける。
女だということを隠し、男子寮で暮らすことになってしまう。
棒弱婦人の主人・マリスに振り回されながら、魔力ゼロの一般人である椿が魔法と法律の学び舎・魔法律学校に入学する。
生意気なオレ系主人と男装の執事の、恋と魔法のファンタジー。

 これまで法律の小説をたくさん出してきた作者が、ライトノベルシリーズとして出したのがいきなり魔法学校。
魔力は遺伝で決まり、その力を持った数少ない人たちだけが日本を動かしているという設定。
あまりのギャップに追いつけないけど、王道のファンタジー。