第67回 江戸川乱歩賞受賞作。
師父から、奥義はこれから集める3人の中から選ぶと伝えられ、唯一の弟子である紫苑は戸惑う。
そして集められた師父の知己たち。
しかし再会の宴の後、湖の孤島に立つ楼閣へ戻っていった師父は、毒を盛られ、腹を刺された状態で死んでいるのが発見される。
孤児だった紫苑を拾って技を仕込み、血のつながらない少女を娘として育てた武術の達人の死が殺人なら、仇を撃たなければならない。
集められた者たちとのやり取りの中で紫苑が考える疑問や可能性は、専門知識を持たなくてもたどり着ける理論でわかりやすい。
そして雪で閉ざされた孤島で起こる事件として密室殺人は王道なのに、特殊な武術のせいで大きく雰囲気を変えている。
最後には師父の執念が強く立ち込めてきて怖くもなるが、後を引く不快さはなく、ずっしりと長い冒険をした気分になって終わる。