アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉


2010年08月12日 読了
 絨毯商人のアブダラは、ある日空飛ぶ絨毯を買う。それを使い毎夜出会う美しい姫と恋に落ちたアブダラは、駆け落ちする直前で魔神に姫をさらわれてしまう。。。

 あれ、ハウルが出てこない。まだ出ない。出ない出ない。。。
と、思いつつ読み進め、いつの間にはアブダラの恋物語として楽しんでいる頃、ハウルと結婚したソフィーが登場する。
 そして実はハウルもカルシファーも側にいた。

 ゆっくり流れる砂漠の時間のような前半と、喜びをさえずる鳥たちがさわがしいオアシスにいるような後半。
 
 普段、私はほかの人の書評は読まないけれど、洋書だった場合は訳者のだけは読む。作者の国の風習や言い回しなど、独特の流れを教えてくれる場合が多いから。やっぱり原書で読めればもっとおもしろいんだろうなぁ。。。

魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉


2010年08月06日 読了
 映画を見てから、原作を読んでみたいと探した本。
児童書で童話のため、登場人物の性格が誇張されている。
 ソフィーは「長女は成功するはずがない」と思い込んでいるし、ハウルのひねくれも徹底している。
 執拗なほどのその主張は、「思い込みに惑わされていることに気づいて!」というメッセージであるらしい。童話ならではなんだろうか。
 作者はJ.R.R.トールキンに師事したという。

 映画とはかなりイメージが変わるが、これは読むたびに何か気付けそう。

小説探偵 GEDO


2010年07月19日 読了
 しがない広告屋の三神外道。通商ゲド。
彼は眠ることによって小説の世界に侵入できる。
現実世界の人物じゃないヒトが彼に依頼したのは。。。

 『飲んだくれで虚無と放蕩でガサガサに荒れた心の中に埋めがたい不全感を抱えた人物』と作者が言うとおり、ゲドはおよそ徳には縁のない人物。ストーリーに影響を及ぼさないことならなにをしてもいいために大暴れする。

 濃いキャラたちが多いためゲドの個性はちょっと埋もれがちだが、彼もまたなにやらアチラの世界に因縁があるようで。

 その辺りは思わせぶりなシーンで終わっていて、様々な小説のように作者でないとわからないわざといろんな想像ができる終わり方にしているのかと思ったら、いずれキチンと終わらせてくれるらしい。
 雑で乱暴な文章ではあるけれど、興味は充分そそられる。

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落下する緑 永見緋太郎の事件簿


2010年06月12日 読了
 ジャズトランペット奏者が主人公の、ミステリ。

 タイトルに惹かれた。表紙が奇麗だった。テーマがジャズとミステリで、サブタイトルに「色」の名が冠してある。

 私の好きなパーツがたくさん入っていて、どうしても読みたい本があったのに次にまわしてしまった。

 内容は作者の言うとおり「フツーの本格ミステリ」だったし、ジャズや曲名、奏者を知らないので流して読む所もあったが、音楽をやるヒトの気持ちは地下水のように濃く流れていて頼もしかった。

インディゴの夜 チョコレートビースト


2010年05月29日 読了
 シリーズ2作目。塩谷の粗野なところも優夜の紳士ぶりもホストたちの自由っぷりも相変わらず見事。

 晶の、どこがオシャレなのかさっぱりわからない若者の服装に対する疑問と、「義務教育を終えた人間が、自分のことを名前で呼ぶんじゃないの」などの、若者からしたらウザいおばさん並みの小言にも共感が持てるのは年のせいか??

 こんなホストクラブがあったら是非覗いてみたい。

インディゴの夜


2010年05月12日 読了
 一風変わったホストクラブ<indigo>。仕事仲間と副業で始めた店に舞い込んだ事件に首を突っ込むうちに結成された、にわか探偵団。

 ホストの男の子たちと渋谷の街を走り回る。

 主人公のフリーライター・晶が、最初はやたら男勝りで下品なのでどうにも嫌悪感が沸いたが、それもそれなりに慣れてくる。

 王道ホストの優夜がうまく中和してくれているためか、オオゴトなのにあっけらかんとしていて後味がいい。

DOWN TOWN/ダウン タウン


2010年05月04日 読了
 中学の2年先輩のユーミさんに誘われて入ったのは、なぜか男子禁制の喫茶店<ぶろっく>。常連さんはほとんど女性ばかり。

 喫茶<ぶろっく>に通うようになって、学校と家以外の居場所を見つけた。

 まだ先のことなんか全然わからないし実感もないけど、大人ってどんなものなのかを見た少年のお話。

 とってもこの人らしい作品。

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凍土の密約


2010年05月02日 読了
 殺されたのは、政治結社の構成員、暴力団員、ロシア人ジャーナリスト、大学教授。
 一見、関係のない殺人事件だが、手口が同じ。

 公安の捜査員・倉島は、これらの連続殺人の裏に潜む大きな穴を覗き込む。。。

 作者は、刑事モノも公安モノも描いている。刑事と公安はその信条の違いから仲が悪いと言うが、どちらの立場の本を読んでもお互いの悪口が描かれていておもしろい。

 でも今回は、倉島とロシアのネタにもかかわらず、ヴィクトルが登場しないので物足りなかった。

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死夢


2010年04月25日 読了
 死夢。死が迫っていることを告げる予知夢であり、死を受け入れる境地へと導く啓示夢である。

 中学時代の友人が、猫が心臓のあたりにのしかかってくるという夢を見て次々と死んでいく。「悪夢による自殺」

 湿気の多い部屋で一人置き去りにされたような心地悪さが、とても作者らしい。流れ的に結末は読めるが、この不気味さを味わうには充分。

 しかし、まだ罪の告白が始まっていないにもかかわらず、すでに罪を犯したと断定している槇村の言動はかなり違和感があった。

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動物園の鳥


2010年04月21日 読了
 引きこもりの鳥井、誰よりも鳥井を最優先する坂木。
二人に依頼された動物園で起こった事件は、怪我をさせられた猫たちの謎。

 3部作の最終話だった。

 主要人物のキャラはとても面白いけど、彼らに巻き起こる事件や謎は、「ちゃんと」しすぎていて少ししらじらしく思える所もある。
 まさに、正論で武装していた松谷のよう。

 痛々しい過去と傷があるからなじめる内容。

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