鹿の王 下 還って行く者


2018年07月29日 読了
 犬にかまれて生き残ったことが大きな意味を持つと悟ったヴァンとユナ、そして違う方向から同じ病を探っている医術師のホッサル。
これまで出会ってきた民族の長たちと知恵を出し合い導き出された病の元とは。

 ヴァンとホッサルが出会って、泥沼の政治的戦いが起こらなかったことでホッとした。邪な気を持つ者の人となりはあえてさらりと書かれているため、そちらに感情移入することはなく、複雑な善悪を感じずに済み、素直に物語に入り込める。

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御徒の女


2017年10月18日 読了
 武家の娘として生まれた長沼栄津(ながぬま・えつ)は、江戸患いの母に代わって家の仕事を引き受けながらも、娘らしい悩みに追われる日々。
そして幼馴染の求婚を断り、兄の進める結婚をする。

 栄津の、娘時代から五十を超える年までの人生。
ままならない人生の色んな場面が栄津の生き方を変えていき、その時々の考え方がとても正直。
不満や葛藤がそのまま描かれ、妙な正義感も同情も善人ぶった感情なども出てこないので、こちらも同意や反発がそのまま受け止められる。
 実の娘にすら道理を説いて厳しくあしらう栄津は、今の世では受け入れられないかもしれないが、とても好感が持てた。身内だからと何でも許して受け止めるのは違うと、私も思う。

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風聞き草墓標


2017年10月02日 読了
 二十年まえ、父は何をしたのか。
佐渡島の鉱山開発、貨幣改鋳の断行など財政の舵取りを担った荻原重秀。彼は収賄の汚名を着せられ、獄中で死した。
時を経て今、その時起こったことの真相が明るみにでようとする。

 父への不審にじっとしていられず、佐渡を目指す娘のせつ。
旅立つ前の出来事と道中の思いが交互にやってきて、せつの心のように惑わす。
痛ましい死がたくさん起こり、どうにもならない悔しさが増えて、生きることのままならなさを存分に感じられた。

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東京會舘とわたし(下)新館


2017年08月13日 読了
 上巻(旧館)とは打って変わって感動的な話が満載。
長い歴史の中で現代に近づき、人々の考え方が今に近づいてきた証かもしれないが、共感を誘うものが多かった。

 歴史ある建物はそれだけで感動を覚えるが、人々に誇りさえ与える。
そんな仕事をしてみたいと思ったり、関わってみたいと思ったり、素直にそれ(東京會舘)を見てみたい。

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お伊勢ものがたり 親子三代道中記


2017年07月23日 読了
 母、娘、孫の3代が、それぞれの思いを胸に、伊勢へ参る。
旅の案内をする御師の久松に連れられ、道中ではスリや子供の抜け参り、許されぬ敵討ちをしようとしている浪人者と知り合いながら、江戸にいたのでは味わえない経験をしていく。

 旅は、伯父の付き添いだったはずが一人で役目をこなすことになった久松の頼りなさでいきなり不安になる。しかし、3人それぞれの個性が出始めた頃、とたんに楽しい道中になり、最後は全て受け止める覚悟が皆それぞれできている。
久松が語る帰りの道中も聞いてみたい。

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残り者


2017年07月07日 読了
 江戸城の明け渡しが行われる前日、大奥では官軍の襲来を恐れて我先にと逃げ出す者で騒然としていた。
そんな中、どうしても気持ちの決着がつけられずに残った女が4人。
出自も身分も違う4人が、誰もいない江戸城に残った訳とは。

 たった二日間の出来事を描いているのに、とても充実した時間が長く続いたような気になる。
それぞれの身の上話もありながら、4人が言いつけに背いて残った理由も明かされていき、ここでの経験がその後の生き方を決めるほどに強く残る物を得た4人。清々しい気持ちで終われる。

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与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記


2017年03月11日 読了
 奈良時代。東大寺大仏造営事業に各地から徴発されてきた若者・真楯は、辛く厳しい3年という任期に就く。
しかし彼の運がよかった所は、造仏所の炊屋の炊男・宮麻呂が作る飯が格段にうまかったことだ。

 大仏作りの話なぞ少しも面白くないと思いながら読んでいたら、舞台はそこの炊屋だった。炊男の宮麻呂に興味を惹かれてからはあっという間に読み終えた。
人の業というほど大げさでもないが、生きる上での幸せや信念が様々あってじんわりくる。立場が違って敵であっても、悪人はいないし、お腹が満たされることが心にとってどれほど大事かが伝わってくる。

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与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 (光文社文庫) [ 澤田瞳子 ]
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潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官


2016年12月19日 読了
 伊豆諸島の「神の出島」でミイラ化した女性の遺体が発見された。
首吊りの跡があり、自殺と断定されたが、岩楯警部補は死体の一部に引っ掛かりを覚える。

 赤堀は相変わらずだけど、必至な様子がだんだん見ていて辛くなってくる。
そこまで駆り立てる熱意はどこから来るのか。
単純な自殺でミイラになってから発見された死体だったはずが、どんどん膨らんでどんどん面白くなっていく。
岩楯から見た赤堀の様子の描写がおもしろくて、何度も読み返すことになった。

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潮騒のアニマ 法医昆虫学捜査官 [ 川瀬 七緒 ]
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玉依姫


2016年09月13日 読了
 生贄のしきたりが残る山深い地域。
昔、そこから娘を連れて逃げたという祖母の嫁ぎ先へ、孫である高校生の志帆は一人で訪ねて行った。
そこで気味が悪いほどの歓迎を受ける志帆。
その後、無理やり連れていかれた場所は、山神の下だった。

 山神の母となることを強要される志帆。
恐ろしさが抜けぬうち、いつしか腹をくくり、自分も周りも変えていく志帆。
最後には思いもよらないところへ飛んで、今までの物語と繋がり、この巻までの八咫烏の物語は、とても狭い世界での話でしかなかったのだと気づく。
益々この先が楽しみになる。

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玉依姫 [ 阿部 智里 ]
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九十九藤


2016年06月25日 読了
 天涯孤独、継母に売られそうになって逃げてきたお藤は、様々な縁に助けられ、ある日、傾きかけた口入屋の再起を任されることになった。
 昔からの風習や、恵まれない生き方を続けてきた者たちは荒み、諦めの心根を叩き直すことから始めるお藤。
 ある日、江戸中の武家奉公人の上に立ち、畏れられている黒羽の百蔵という男と出会う。

 祖母から受け継いだ気の強さと情の強さ、肝の太さで生き抜いてきたお藤が、気の荒い男たちには思いもよらない方法で生きる術を身に着けさせる。
人との縁には恵まれても、家族には恵まれないお藤だったが、やがて細い糸の様なつながりが生まれ始めるところは、溢れだすような希望が見えた。

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九十九藤(つづらふじ) [ 西條奈加 ]
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