九十九藤


2016年06月25日 読了
 天涯孤独、継母に売られそうになって逃げてきたお藤は、様々な縁に助けられ、ある日、傾きかけた口入屋の再起を任されることになった。
 昔からの風習や、恵まれない生き方を続けてきた者たちは荒み、諦めの心根を叩き直すことから始めるお藤。
 ある日、江戸中の武家奉公人の上に立ち、畏れられている黒羽の百蔵という男と出会う。

 祖母から受け継いだ気の強さと情の強さ、肝の太さで生き抜いてきたお藤が、気の荒い男たちには思いもよらない方法で生きる術を身に着けさせる。
人との縁には恵まれても、家族には恵まれないお藤だったが、やがて細い糸の様なつながりが生まれ始めるところは、溢れだすような希望が見えた。

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名もなき毒


2016年06月03日 読了
 大企業の広報で採用したアルバイトは、トラブルメーカーだった。
彼女は嘘の履歴を言い、部内をかき回しトラブルを撒き散らす。
そして違う場所では、コンビニで買った飲み物に毒物が混入されていて死人が出ていた。

 関連がなさそうな二つの出来事が、ジワリとしみこむようなスピードで周りの人々を侵す。
物質としての毒だけではなく、嘘という毒、いじめという毒など、人を苛む様々な毒が出てくる。
とても長いが気にならない。

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メビウスの守護者 法医昆虫学捜査官


2016年03月10日 読了
 東京都西多摩で、男性のバラバラ死体が発見される。岩楯警部補は、死体が発見された村出身の山岳救助隊員の牛久と組み、捜査に加わる。
 ところが、司法解剖をした医師の見立てと、法医昆虫学者の赤堀が立てた死亡推定時刻に10日の誤差があった。

 今回もまた、赤堀の担当となった岩楯。虫が赤堀に知らせる遺体の状況と、法医学者との意見の違いを気にしつつも、刑事の勘は別のところで怪しい人物を探り出している。
 安定のスリル感。
寒気が起こるほどの状況がいくつも出てくるが、虫の恐怖と共に最後はうすら寒い狂気に触れてさらに恐怖が増幅する。
毎回新しい知識と驚きでわくわくする。

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黒十字サナトリウム


2015年12月16日 読了
 ある日梶原教授は、自分が狂っていることに気付いた。
そしてそれを知る友人を殺し、死に場所を探して旅に出る。
たどり着いた北の診療所には、自分を異形の者だと思い込む人たちが暮らしていた。

 様々な時代、場所で登場する美しい女性の正体が明かされるにつれ、サナトリウムに集う人々の正体もわかる。
近頃多い、わざとしつこく修飾語を並べて複雑に見せる、内容のないライトノベルと違い、哲学的な美しさを感じる文章。はじめは読みづらく感じるが、そのうち取りつかれたように目が離せなくなってしまう。
物語自体は目新しいものではないけど、その文章が魅せる雰囲気は後を引く。

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図書館の魔女(下)


2015年09月26日 読了
 「キリヒト」としての使命が明らかになった後も、二人だけの指話でさらに絆が深まるマツリカとキリヒト。
 そして国の情勢が戦へと傾いていきそうになる時、マツリカは、唯一の言葉である左手を封じられる。

 一の谷を守るため、また左手を取り戻すため、周辺国への土産を手にして敵国へ乗り込むマツリカ。
上巻よりも量があったのに、少しも苦にならない。
大冒険となる下巻はスピード感が増し、読み応えたっぷり。

 小休止的に入っていた魔導書などの禁書に関する講義シーンが印象的で、納得したり苦笑いしたりと、本に関する興味が増した。

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図書館の魔女 烏の伝言 (下) (講談社文庫) [ 高田 大介 ]
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続々・珈琲屋の人々


2015年09月14日 読了
 かつて人を殺したことがある『珈琲屋』の主人・行介は、罪を償った後もずっと、自分を罰していた。
そんな行介のもとには、今回もまた、自分では決められない事や悩みを持った人たちがやってくる。

 切なくて辛くなる話ばかりでも、決して暗い気持ちにはならない。
何かきっかけがあれば決められるのかもしれないけど、そのきっかけなんてほとんどやってこなくて、「半分だけ」決まった自分の心という部分は、とてもよくわかる。

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珈琲屋の人々 宝物を探しに [ 池永 陽 ]
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ごんたくれ


2015年05月24日 読了
 京の絵師である、ふたりのごんたくれの生涯。
当代一の誉れ高い絵師・円山応挙の弟子・吉村胡雪となった彦太郎。
その師匠応挙の絵を『絵とは言わん』と否定した深山箏白こと豊蔵。
二人はことごとく対立し、悪口を言い合い、めったに顔も合わせないが、相手の絵は認めている。

 素直になれない二人のごんたくれの生き様が、師匠が逝き、仲間が逝き、やがて一人になるところまで描かれている。
始めは二人に興味を引かなかったが、すぐに所心読み返したくなるほど一文字も逃したくない思いが湧き、最後はどうなるのかとわくわくして止められなかった。

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魔道師の月


2014年11月09日 読了
 『夜の写本師』でカリュドウが使っていた本の魔法を生み出した、魔道師キアルスの物語。
 強烈で禍々しい闇が、ある日若い大地の魔道師レイサンダーの前に現れる。
なぜこの闇の存在に、誰も気づかないのか。あまりの圧力に彼は逃げ出す。

 心に闇を持たぬゆえに魔道師としての力がいまいちなレイサンダーと、この世に1冊しかない貴重な本を焼いてしまったために一生をかけてそれを復元しようとするキアルス。
二人は、その大きな闇<暗樹>に気付いたために命を賭してそれを封じる道を歩む。

 どんなに大きなことをやり遂げたと思っても、何千年と受け継がれてきた世界の前では見えないほど小さい。しかし、少年が大人になるだでは大きすぎる。
魔道師の力が全面にあった前作とは少し違った今回だが、前作では影の薄かったキアルスがこんな冒険をしていたのかと、魔道師というものにさらに興味がわいた。

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魔道師の月 [ 乾石智子 ]
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蜩ノ記


2014年08月27日 読了
 家譜編纂と十年後の切腹を命じられて幽閉中の秋谷の下に、城内で刃傷沙汰に及んでお咎めを受けることになった檀野庄三郎が遣わされた。
そしてそれは、いざ切腹の時に秋谷が逃げぬよう見張ること、幽閉のきっかけとなった事件の真相を探ることを命じられてのことだった。

 己に正直に、信条を揺るがせず、人を信じて生きる秋谷の生き様は最後まで変わらない。武士としての生き様だけとは言い切れない潔さと美しさがある。
予想を超えた気持ちのいい読後感。

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蜩ノ記 [ 葉室麟 ]
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はなとゆめ


2014年04月28日 読了
 清少納言は28歳の時、帝の后・中宮定子付きの女房として仕えることになる。
始めは顔を見られるのすら恥ずかしく、夜の暗いうちしか参内しなかった彼女も、中宮である定子の人柄に触れるにつれ、少しづつなじんでいく。

 紫式部とのライバル関係が広く知られているため、気が強く自分を曲げないイメージがあるが、この本では気弱で内気、なんとも頼りない女性であるところから始まる。

 主を、都の雅を華とたとえ、それに魅せられる様子にこちらもうっとりする。
タイトル通り、最後まで夢の中で漂っているような感覚で、この夢に浸れる人には最高かも。
表紙も美しい。

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はなとゆめ [ 冲方丁 ]
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